コラムのためにナガカレーを作って食べなきゃ!
ということでせっかくの機会だし、料理人をしている友人もご招待してナガカレーを作って食べ
てみた。
なぜせっかくの機会となってしまうのか。
もちろんナガカレーは毎日食べても飽きずに美味しいのだが、作ると3日は部屋がナガカレーの匂
いになるので、同居人への配慮もあって遠慮がちになっている。
コラムという免罪符を使って盛大にナガカレーをレッツクッキングだ!
今回は2種類のナガカレーを作って食べてみようと思う。
2024年に訪れた際に書いた日記と教わったレシピを記したノートを頼りに作っていく。

まずは、ナガカレーの箸休めというか福神漬けポジションのおかずであるゴーヤの
KARELAROSEBを作っていく。これはアオ族に教えてもらったレシピなのでアオ語である。

ナガ人は辛いのと苦いのが大好き。ナガランドで見たゴーヤは一個が小さくて丸く苦みが強かっ
たが、日本のゴーヤでも十分代用可能だ。苦味を活かすためにわたは控えめにとって分厚めに
切っていく。
小鍋に塩一掴み、粉唐辛子一掴み、刻んだゴーヤが浸るまで水を入れて、ナガ調味料バンブー
シュートエキスをひと回し入れる。
ここで登場してきたバンブーシュートエキス。ナガランドには、生のたけのこを潰して発酵させる
調味料がある。強烈なメンマのような匂いで、この酸味と旨味と香りはナガカレーには欠かせず、
レシピに多用される。潰したときに出るエキスは別で発酵させて使うのだが、これは、ナガラン
ドの市場で空きペットボトルに入れられて販売されていたものだ。
火にかけて汁気がなくなるまで煮込んだら完成。

次は、やっぱりこれもナガカレーのアクセントとして欠かせない、チャツネと呼ばれるペーストを
作る。
チャツネはヒンディー語だが、おそらくそれぞれのナガの部族の言語ではそれぞれに独自の名前
があるだろう。
そう、ナガ人は辛いのと苦いのが大好き。ナガ人が作るチャツネの定番、発酵川魚とチリとトマ
トを使っていく。
発酵川魚もナガランドで仕入れたものだ。これまた強烈に発酵していて、滋賀特産のふなずしと
少し似ているが全然違う香りがするし、単体では食べられないほど苦くて臭い。
これらを全てを少々焦がす程度に火で炙って、すり鉢ですってペーストにする。ナガランドでは囲
炉裏の灰の中にぶち込んで炙っていた。
少量でとても苦辛いので、カレーを食べるときにちょっとつけて味変するとご飯がすすむ。
ここらでお待ちかねのナガカレーを作っていく。まずは、アニシポークカレー。
豚のスペアリブとナガランドのとんでもなく辛い唐辛子ナガチリ、アニシ、ジャガイモ、塩を鍋に
入れて水を入れ、煮込む。今回はなぜか紫色のジャガイモが家にあったので使ってみた。

アニシと呼ばれる謎の黒い塊は、山芋の葉っぱを乳酸発酵させてすりつぶし、だんご状にして燻
製させたものだ。ナガランドは部族ごとに作るのが得意な調味料があり、アニシはアオ族が得意
なのでアオ語の名前である。
使う前に炙ることで、鰹節のような香りが出てきて、少し柔らかくなり、砕いて鍋の中に入れ
る。

ナガチリも同様に炙って入れるのだが、この唐辛子、とにかく辛い。私はせいぜいひと鍋に一個
入れてそれでもヒーヒーいうのだが、ナガ人は4個くらい入れたりする。
日本の唐辛子でもいいのだが、ナガチリは辛いだけじゃなく独特な旨味がある。日本に住んでい
るナガ人と遊んでいて、簡単な食事を作ってもらったときに、ナガランド産の食材はナガチリだ
けだったが、しっかりナガカレーの味がした。唐辛子は単純に辛さしかないと思っていたので目
から鱗だった。

だいたい1時間くらい煮込み続けたあたりで、ナガチリ、アニシ、ジャガイモの順に鍋から出して
すり鉢で潰し、また鍋の中に入れて煮込む。

ナガ人は豚肉が大好きで、ナガランドでは、犬、豚、牛、鶏の順番で値段が高い。犬肉は精力を
つけるための特別な肉なので、豚肉、特に燻製にした豚肉は少し贅沢な食事となる。そして燻製
豚肉を一番美味しくするのがアニシカレーなのだそう。
ナガランド滞在中に、風邪をひいて少し休んでいると、病人食だと言って渡されたナガカレーに
は犬肉が入っていた。なんの肉か告げられずに食べたので少し臭いけどうまいなぁくらいの感想
だったが、犬肉専門店の前を通るときはぶら下がる犬の足を直視できなかった。
続きまして、キャットフィッシュアクニカレーを作る。

キャットフィッシュ(ナマズ)、トマト、生姜、発酵たけのこ、アクニ、塩、水を入れて鍋で煮込
む。
ナマズは手に入らなかったので、なんとなくナマズっぽそうな、あんこうで代用してみた。
発酵たけのこは、生のものと乾燥したものを両方使ってみた。これらもナガランド産。
2025年に日本で大量のたけのこを掘り、ナガランド直伝の発酵たけのこを作ってみたが、もれな
く全て腐敗してしまった。おそらくたけのこの種類が違うのだと思う。
そして、アクニを入れる。
アクニとはナガランドの納豆である。日本の納豆のように粘りはあまりないが、超熟成していて
鍋に入れるとぶわりと匂いが空間を支配する。ナガランドでは夕方になるとどこからともなくこ
の香りがしてきたものだ。インド映画で、デリーに住むナガ人がアクニカレーの匂いでインド人か
らクレームを受けながらも、なんとかアクニカレーを作っていくといった物語の映画があるほど
だ。アクニはスミ族が得意なのでスミ語である。

そして煮込む。
お気づきかと思うが、ナガの料理はほぼ煮込みだ。昔は土器や竹に入れて囲炉裏でずっとぐつぐ
つ煮込んでいたのだろう。

ワンプレートに大量のご飯とナガカレーを盛り付ければ完成!!

手で混ぜながら食べる。なんなら手で咀嚼して手が食べているかのように食べていたナガ人に
倣って。
いろんな人にナガカレーを食べさせてきたが、大体の人は、食べたことないのに懐かしい味がす
ると言った感想を持つ。
イメージしていたカレーとは全然違うと言われることも当然あるわけだが、イギリス、インドの植
民地化に伴い無理やりやむを得ず少数民族が統合し、共通語が英語になったことから便宜上カ
レーと呼ぶしかなくなったものなのである。
文化的背景がある種のスパイスとして効いているカレーであると言いたい。
私がナガカレー屋として日本のカレー界隈に鮮烈なデビューを果たす日も近い。
坂本 森海_column1「お茶」>>>
https://kyoto-artbox.jp/column/91978/
坂本 森海_column2「我が家のカレー」>>>
https://kyoto-artbox.jp/column/92653/
坂本 森海 さかもと・かい
陶芸家/美術家。長崎県出身。1997年生まれ。
2024年にインド北東部ナガランド州に滞在。約20年ぶりにナガランドを訪れた為、まだ子どもだ
と思われており、どこにいくにも護衛がつけられ、護衛と共に飯を食い、護衛と共にベッドで寝
たりしていた。帰国後、その話をした友人から“王子”とあだ名をつけられる。