𡈽方 大|展覧会をつくる人
打ち合わせの際に、下記の確認事項を一つ一つ確認していただければ展覧会の概要が完成します。それらの情報はプレスリリースやフライヤーの作成、契約書にも共通する情報になりますのでしっかりと取りまとめをしましょう。
全ての事項を確認をするのには展示の内容と規模によりますが、1~2時間の打ち合わせが数回、メール等のメッセージのやり取りが数回から数十回かかるかと思いますが、展覧会をする際には必要なコミュニケーションコストですので円滑な展示を行う為にも各位へリスペクトのあるコミュニケーションを何よりも大切にしましょう。
vol.02
具体的な確認事項
1. 会場の基本情報の確認
展示期間
□ 会期 日程だけでなく、開館時間も必ず確認。
□ 休み 休館日、特に祝日や祝日明けの営業日を確認。
搬入・搬出期間
□ スケジュール 搬入・撤去の作業可能な期間と時間を確認。
□ 夜間作業 施設によって夜間作業が可能なところもあるが、事故リスクが高まるため、基本的には夕方までに作業を終えるスケジュールを組む。
□ 予備日 設営に慣れていない場合は、搬入に予備日を1日設ける。
会場図面
□ 採寸・撮影 図面がある場合でも数値が不正確な場合があるので基本的には自身で採寸と撮影を行い、展示空間を把握することを推奨。
□ 図面 管理者から提供してもらう。理想は下記の3種類があるのが望ましいが、平面図のみということが多い。
▸平面図 上から見た図面。壁の位置や仮説壁用レールの位置が把握できる。高さが不明な場合があるのでその場合は現地で採寸する。
▸展開図 壁の高さや幅、入口のサイズが把握できる。平面や映像作品の配置計画に役立つ。
▸電気設備図 照明ダクトレールやコンセントの位置が把握できるが、施設が所有していない場合が多々ある。
他イベントの予定
□ 同時開催 複合施設や美術館などでは、同時開催のイベントの有無を確認。
□ 近隣イベント 近隣の文化施設等で大規模なイベントがある場合、ブッキングしないようにレセプションやトーク、パフォーマンスのスケジュール調整を行う。
2. 会場設備の確認
壁・天井・床
・作品の壁設置
□ 穴あけ ビス、釘、タッカーの使用可否を確認。
□ テープ 使用可能な粘着テープの種類を確認。
□ 補修 穴あけをした場合は誰が補修するのか、塗料やパテの提供があるかを確認。
・壁素材
□ 石膏ボードのみorベニヤのみ 軽い作品設置は可能。重量物の設置が難しい。
□ 石膏ボード+構造用パネル 重量物の展示が可能。大型作品や大型モニターを設置する場合は、管理者に重量制限を確認。
・壁表面
□ 塗料 一般的な展示壁は塗料仕上げ。搬入出時のタッチアップで塗料が必要になるので在庫と塗料の種類を要確認。
□ 経師張り(紙) 仮説壁などは紙に接着剤を塗って貼り付けているものの場合がある。粘着力の弱いマスキングテープを貼り付けても剥がす際に表面の紙が剥がれることがあるので注意が必要。
□ クロス張り(布) 最近はあまりないが、昔ながらの会場だとクロスが張られているところもある。ビス穴を開けると表面がボコボコになるので基本的にタッカーしか使えない。
□ その他 コンクリートや漆喰などさまざまな種類の壁があり、それによって展示方法が異なる。使っていいものと使ってはいけないものを細かく指定している会場もあるので、管理者と展示方法については細かく確認が必要。
・天井構造
□ 照明 ダクトレール、蛍光灯の位置を確認。
□ 吊り元 プロジェクターやスクリーンの吊り下げ作業がある場合、バトンやレール、アンカーなどの吊り元の有無を確認。
・作品・什器等の床固定
□ 穴あけ 作品や什器を床に固定が必要な場合、ビス打ちの可否を確認。
□ 接着 穴あけができない場合、作品や展示台を両面テープや重しで固定可能か確認。
□ 養生 作品が什器が床に刺さったり擦れたりする場合はどはゴムマットやフェルトなどの養生が必要。
照明・電源
・照明
□ スポットライト 調光の可否、色温度、拡散・集光の種類を確認。可能であれば、事前に照らしてみて光の見え方を確認。型番・スポット数がまとまったリストがあれば管理者から共有してもらう。
□ 蛍光灯 空間をフラットに見せたい場合に使用する。LEDなのか、蛍光管なのか要確認。LEDの場合も差し替えが可能であれば色の調整が多少可能。
□ 自然光 窓やショーケースなどのガラス張りになっている空間の場合、日中は自然光が入り、夜間は光がなくなるので見え方が変わってくる。光の量を調整し見え方を調整する。
・電源
□ 容量 一般的なコンセント1つの容量は1500W(15A)。消費電力の多い作品は、複数のコンセントから電源供給を検討。
□ 位置 部屋のどの位置に電源があるのか確認。
□ 配線処理 壁や床、天井などから電源をとる際、ケーブルを這わすことになるのでその処理の仕方を事前に考えておく。ケーブルが裸でいいのか、モールに収めるのかなど要検討。
防犯・安全対策
□ 監視員 監視員が展示会場にいるのか、受付にいるのか、そもそも誰もいない無人の空間になるのかを要確認。監視員が会場にいる場合は監視員用の椅子が必要であり、展示構成として作品鑑賞の妨げにならない場所かつ、展示全体を俯瞰して見える位置に配置する。
□ 監視カメラ 監視員がいない場合は監視カメラの設置は必須。
□ 結界 作品保護や鑑賞者の安全を確保する為にベルトパーテーションや床にテープラインなどを引き、人が進入できない様にする。
□ バックヤード 作品運搬時に保護していた梱包材を収納できるバックヤードの有無と広さを確認する。バックヤードがなければ梱包材は持ち帰る必要がある。
□ 落下防止・転倒防止 作品や什器、仮説壁、照明、機材等が倒れたり落ちたりしない様にきちんと固定をする。固定方法は管理者と要相談。
□ 火災報知器・非常口・消火器 基本的に触らない。消防法でこれらを触る場合は消防署の了解を得る必要がある。
□ 通路幅 仮説壁などで空間を仕切る際、通路幅を狭くしすぎてはいけない。建築基準法や消防法などで通路幅は90cm以上と定められているが、車いすと歩行者がすれ違える135cm以上の通路幅が望ましい。
□ 不審者 ギャラリーストーカーや不審者に関する施設の対応マニュアルがあれば確認。トラブル発生時には、一人で対応せず、身の安全を守ることを最優先にし、すぐさま助けを求めましょう。
3. 予算・契約に関する確認
予算
□ 予算総額 展覧会予算の総額確認。支払い時期確認。事前の支払いが可能なのか、展覧会撤収後になるのか要確認。
□ 会場利用料 無償か有償か確認。有償の場合は支払い方法と支払い期限を確認。
□ アーティストフィー 支給の有無を確認。支給の場合は金額と支払い時期、源泉徴収を確認。最近やっと浸透してきたがこれまでは制作費のみというのが多かった。
□ キュレーションフィー 支給の有無を確認。支給の場合は金額と支払い時期、源泉徴収を確認。
□ 制作費 支給の有無を確認。支給の場合は領収書提出の有無の確認。
□ 交通費 支給の有無を確認。支給の場合は領収書提出の有無の確認。上限金額があれば確認。
□ 宿泊費 支給の有無を確認。支給の場合は領収書提出の有無の確認。上限金額があれば確認。
□ 委託費 デザイン、撮影、運搬、設営、作品制作、保険など展覧会毎に関わる人が変わってくるが、誰が誰にいつ依頼をして、いつ納品され、いつ支払うのかを明確に。
・販売
□ 作品販売 販売の可否を確認。販売の場合は売上分配割合を確認し、プライスリストを作成する。
□ 物販 グッズや書籍などの販売の可否を確認。販売の場合は売上分配割合を確認。
□ 決済 販売時の決済方法確認。現金であればお釣りを準備。クレジット、QR決済などであれば決済端末を準備。
□ 清算 売上振込の時期確認。請求書や領収書が必要であれば発行依頼。
契約
□ 参加同意書 展覧会に出品することを同意してもらうための書類。できればあった方がいい。
□ 作品の写真・映像の取り扱い許可書 過去作や展示作品の写真データの広報使用や印刷物(フライヤー、カタログ、報告書等)への掲載。展示作品の広報用の撮影と編集(トリミングや文字乗せなど)の可否。メディアへの取材用データとしての提供などの可否。来場者の撮影許可とSNS投稿の可否等をまとめた書類。
□ 免責事項 盗難・事故時の責任範囲、開催中止の条件(災害時や重大な違反など)など。契約書の最後の方にサラッと書かれていることが多い。
4. 展示設営・搬入に関する確認
搬入
□ 搬入時間 開館閉館時間を確認。最初と最後は管理者が必ず立ち会う。遅刻は必ず連絡する。買い出し等で会場を出る際には必ず一声かけ、施錠が必要であれば施錠する。無断で出入りをしない。
□ 搬入車両 入れる車両の最大サイズを確認。間口が狭い場所や屋根や囲いなどがある場合はサイズの制限があり、トラックなどが入れない場合がある。
□ 駐車スペースの有無 搬入出時の駐車場利用可否、許可や申請が必要であるかも要確認。
□ 搬入口の位置・サイズ 搬入口が施設の床にあるのか確認。また大きな作品を運び込む場合は必ず扉のサイズを採寸する。
□ 搬入出経路 搬入口から展示スペースまでの通路幅や高さを確認。また、台車で作品や資材を運搬することができるかスロープの有無や床の状況を確認。
□ 搬入出用エレベーターの有無 1階以外で展示の場合は要確認。エレベーターサイズを採寸。作品がエレベーターに入らない場合は人力で運べる階段があるか確認。
□ 脚立 施設で貸出可能な脚立の有無とサイズ確認。
□ ゴミ処理 持ち帰り義務の有無、施設側で廃棄が可能であれば分別方法の確認。産廃などが発生した場合は処理費用と手配方法の確認。
□ 宅配受取 作品や資材などを輸送で送る場合、受け取り先の宛名、対応可能な日時の確認。受取日は搬入当日に到着日を指定しているとずれ込むことがあるので、必ず前日までに到着日を設定して送付する。
□ 保険 施設としてどこまでの保険をかけているのか確認。必要なのは3種類。作品の損害や盗難に対する保険。搬入出に関わる人間の事故や怪我に対する保険。鑑賞者の事故や怪我に対する保険。施設が入っている保険の中に適応されないものがあれば展示の一ヶ月前までには保険会社へ連絡をして保険をかける。保険料は数千円から数万円程度で収まるのでまずは大手か、近所の保険会社へ電話で要相談。
什器・設備の貸出
□ 設備機材 展示台や椅子、暗幕などの備品リストを共有してもらい、貸出可能か確認。
□ 映像機材 プロジェクター、モニター、スクリーン、メディアプレイヤー、音響機材等のリストを共有してもらい貸出可能か確認。
□ Wi-Fi パスワード確認。ネットワークが必要な作品の場合はセキュリティーと速度を要確認。
5. 展示プランに関する確認
展示プラン準備
□ プランイメージ プランイメージは可能な限り精巧で縮尺が整ったものを作成する。平面作品であれば平面図、展開図に作品を配置し、立体やインスタレーションであれば建築模型とマケットの制作か、3Dイメージを作るのが望ましい。他者に作品イメージと構造の共有ができることが目的なので、最低限の方法としては展示空間の写真に直接ドローイングを描き込むというやり方などでもいい。
□ 照明イメージ どの様に照明を当てたいのかのイメージを事前に作成する。照明は後回しになりやすいが作品の見え方にダイレクトに影響するのでとても重要。自然光で日々の状況変化を楽しむのか、蛍光灯で空間全体をフラットに見せるのか、スポットで視線を誘導するのかなど。
□ 段取り 段取りはやりすぎるぐらい過剰にやりましょう。思いつく限り全ての作業工程を細かく書き出し、必要な資材、機材を洗い出します。自分1人ではできないものがあったとき、誰に頼めばいいのか、どのような専門性を持った人と協働すれば実現可能なのかなどを書き出しておくと、打ち合わせ時の相談などがスムーズに行われます。
□ スケジュール 段取りで洗い出した各タスクにどれだけの人手と時間がかかるのかを計算し、余裕を持った搬入スケジュールを組む。特によくあるのが、当日になって足りないものが発生したときの買い出しである。買い出しにいくと移動時間も含めてかなりの時間がかかってしまうので買い出しが発生しない段取りを組む。
□ 権利保護 既存の作品や資料、書籍などを作品プラン内に使用する場合の著作権や肖像権などの権利の所在と使用許可を確認。
□ 健康被害 爆音、強烈な光、臭気、ガス、粉塵など鑑賞者や監視員に対して健康被害を起こす様なプランの場合、完全に安全だと確認ができる状態にまで調整するか、ゾーニングをするなどの被害を受けない対処が必要。
平面作品設置方法
□ 額装 100均やIKEAなどの安価な額は薄く歪みやすく、壁に設置しづらい構造になっている為、ある程度高価でも額縁屋で裏面にどっこや金具が取り付けられるしっかりとした構造の額がおすすめ。
□ どっこ 斜め45度にカットしたあて木を壁に固定し、作品の額にも同じ角度の切れ込みが入っていればそのまま設置し、切れ込みがなければどっこを額にとりつけ、壁のあて木に引っかけて吊りかける。金具の製品もある。
□ ワイヤー 平面作品がある程度の強度と金具の取り付けや穴あけがしてあるものであればワイヤーで吊ることが可能。
□ ピン 印刷物など複製可能なもの場合、画面の4角に穴を開けてピンで固定することが可能。
□ テープ 複製可能なものであれば両面テープなどを直接貼りつけて設置が可能。壁、マスキングテープ、両面テープ、印刷物の順番で貼り付けて固定する。
□ その他 クリップや磁石、アクリル板で固定など様々な方法がある。
立体作品設置方法
□ 床置き 床を傷つけないようにゴムマットやフェルトなどを敷く。重量物の場合は床の耐荷重を管理者に確認する。
□ 什器に置く 机や展示台などの上に作品を設置する。床から一段あげる事で作品を鑑賞して欲しい高さをコントロールすることができる。また、展示台のサイズを2回りほど大きく作ることによって手が触れられない結界としての役割も果たす。
□ ショーケース 小作品であれば設置可能。脆い素材や絶対に手を触れて欲しくないものなどは盗難防止としての効果もあるが、ガラス面が光を反射するので鑑賞しづらくはある。
□ 吊り 作品を吊るというのは作品を置くよりも3倍以上大変になるということを理解し、必然性がある場合のみ吊りの設置しましょう。
映像作品設置方法
□ 暗室 完全遮光の空間が望ましいか、減光程度での空間でもいいのか。入口に暗幕が必要かも要確認。
□ 映像 プロジェクターであれば暗室に、モニターであれば照明がついていても鑑賞可能。
□ 音響 グループ展などの場合、作品の音が他の作品へ影響することがある。音量がどれだけ必要なのか、その必然性があるのかを要確認。最初の配置割り振りでできるだけトラブルを回避する。音が干渉する場合は配置の変更や防音用の幕などの対処が必要。
□ Wi-Fi Wi-Fiを電気や水道と同じようにインフラと捉えがちであるが、とても不安定なものなので遠隔操作や配信などで使用する際はトラブルがとてもよく起こる。復旧作業中の代替展示案を事前に考えておく。
□ 配線 配線を裸で見せるか、モールにするかで準備するものが変わってくるのでどちらにするかをできるだけ事前に決めておく。
□ 起動終了マニュアル 映像や照明の調節が必要な作品はマニュアルを作成する。展示期間中毎日行う作業なのでできるだけ手順を簡単にし工程を減らす。専門知識がなくても老若男女誰でもマニュアルを読めばできるものが望ましい。またトラブルがあった際の対処方法と緊急連絡先も記載する。
6. 展覧会に関わる役割・協働者
協働者(予算数万円から数十万円規模の展覧会に関わる人たち)
アーティスト:展覧会に出品する作品を制作する人
キュレーター:展覧会の企画をする人
ディレクター:展覧会の運営をする人
コーディネーター:展覧会の調整をする人
デザイナー:展覧会のフライヤーやカタログなどのデザインをする人
カメラマン:展覧会の記録撮影をする人
アートハンドラー(インストーラー):展覧会の設営をする人
受付:展覧会の入口で案内をする人
監視員:展覧会の安全を見守る人
etc
協働者(予算数十万円から数百万円規模の展覧会に関わる人たち)
アーキテクト:展覧会の什器設計や会場構成などをする人
内装・ディスプレイ:展覧会の仮設壁やサインなど大掛かりなものを設置する業者
編集:展覧会のカタログ制作を取りまとめる人
翻訳:展覧会のコンセプトやカタログテキストを日本語以外の言語に翻訳する人
出版:展覧会のカタログをISBMをつけて発行、販売をする業者
etc
受付・会場案内
□ 受付 設置可否を確認。ハンドアウト、フライヤー等の配布可否を確認。
□ 来場者カウンター カウンター設置の有無。カウント方法が自動なのか手動なのか確認。芳名帳のみなのか、カウントをしないのか。
□ 注意書き 性的な表現、暴力的な表現、政治的な表現の場合、入口でゾーニングをする為に注意書きを掲載が必要な場合がある。
□ ピクトサイン 写真撮影の可否、動画撮影の可否、フラッシュ撮影の可否、SNS投稿の可否、手触れの可否
□ インストラクション 体験型の作品の場合には指示書を掲載、またはハンドアウトに記載するなどがある。
□ ハンドアウト キャプションを作品の隣に設置するのではなく紙に作品情報と配置図を集約する場合に必要。展示コンセプトやインスタレーションが書かれている場合も多い。
広報
□ フライヤー 最近はデザインはしているが、フライヤーやポスターの印刷をせず、画像のみをインターネット上のみの広報を行うことが増えてきた。印刷費と郵送費と配送の労力を別に当てるというのは悪くはないが、個人的には紙の印刷物は刷った方が良い。
□ SNS 美術に関心がある層への広報手段としてはSNSが一番広く、遠くまでリーチするが、日々流れていく情報量が多すぎるので記憶に留まる仕掛けがある程度必要。
□ メールニュース 施設としてがリリースしてもらえるかを確認。なければ個人でこれまでお世話になって方達へリリースする。
プレス 展覧会情報をまとめ、ジャーナルへ取材をしてもらえるようにリリースする。
サイン ポスター等掲示して道ゆく人に立ち止まって見てもらう。横断幕など巨大なものは業者へ発注が必要。
7. イベントに関する確認
□ イベント内容 アーティストトークやゲストを招聘してのディスカッション、参加型のワークショップなどプランを練る。
□ 会場予約 機材や防音設備、座席数などイベント内容に応じて適した会場のスケジュール確認し確保する。
□ 機材使用 音響、映像機材確認と予約手配。音量制限があれば確認。
□ スタッフ 受付、誘導、撮影、音響、司会などのスタッフ確保。
□ チケット 有料イベントの場合の販売方法と売上分配割合の確認。
□ ケータリング 飲食を伴うイベントであればケータリングを手配。
□ 撮影、配信 撮影に来場者が映り込んでしまう場合は来場者全員に受付で許諾をとる。予約制のイベントであれば予約フォームに撮影許諾の同意項目を入れる。ゲストにも撮影許諾をとる。
□ アーカイブ 映像、写真、音声、文字起こし、レビュー、報告書などを残すか、何も残さないか。
8. 搬出・原状復帰に関する確認
□ 搬出スケジュール 展示最終日の閉館時間後に撤収ができるか確認。作品の撤収やタッチアップ、清掃に時間がかかるようであれば人手とスケジュールを調整する。
□ タッチアップ 誰が穴の空いた壁を埋めるのか。汚れた壁を塗り直すのかを明確にする。凸凹で色むらがある壁は目が当てられない。
□ 会場清掃 展示前よりも綺麗にする。必ず綺麗にする。汚れが落ちないようなものであれば塗装をし直すなどの対処をする。
□ 什器・備品の返却 レンタルしていた備品の種類、個数を管理者と確認し、元あった場所にしっかりと戻す。紛失や破損した場合は弁償か場合によっては保険で賄う。
□ 集荷 作品や資材、荷物を宅配する場合、作家と管理者両方が立ち会い確認することが望ましいが、作家が立ち会えない場合、作家の了承があれば管理者か企画者のみの立ち会いでも可。
□ ゴミ処理 持ち帰り義務の有無、施設側で廃棄が可能であれば分別方法の確認。産廃などが発生した場合は処理費用と手配方法の確認。
□ 現場復帰 全ての作品が撤収し、清掃とタッチアップが終了した時点で作家と企画者、管理者が一緒に会場の現場復帰を確認する。
9. アーカイブ
□ 写真記録 SNSやポートフォリオサイト、施設のWebサイトなどに記録として残す。
□ 映像記録 展覧会の空間全体をジンバルやドリーなどで撮影し、youtubeなどでアーカイブする。
□ 3D記録 3Dスキャンが簡単にできる様になり、展示構成を把握するということについてはとても便利だが鑑賞体験としては解像度がまだまだ足りない。
□ 音声記録 コロナ禍でPodcastが再度流行し、音声配信なども増えてきた。映像とは違った趣がある。
□ レビュー 展覧会やイベントのレポートやレビュー、批評などを依頼し、施設のWebサイトやジャーナル(新聞や雑誌など)に掲載か、カタログや報告書などに寄稿などがある。
□ カタログ 展覧会をもう一度開催するぐらい作るのに予算と労力がかかるが、作るに越したことはない。カタログがあれば後世へ届く。
10. まとめ
展覧会を準備していく中でもっとこうしたい!という欲望がどんどん出てくると思います。現実的に出来ることと出来ないことがありますが、それでも様々な挑戦をすることはまた次の展覧会を作る糧になります。
1929年に「ホワイトキューブ」という展覧会の形式が確立されてからもう間もなく100年ほど。様々な展覧会がやり尽くされてきたように思えても美術史の中ではほんの一瞬にしかすぎず、これからどのような展覧会を作っていくのかという余地も可能性もまだ未知数です。新しい展覧会の形式も出てくるかと思いますがそれでもこのコラムでの内容は展覧会の基本となることですので参考にしていただければと思います。
>>> vol.01
コミュニケーションの心構え
>>> vol.03
おすすめの参考Webサイト、書籍
𡈽方 大|ひじかた だい
展覧会を作る人。1989年愛知県生まれ。2011年金沢美術工芸大学美術科彫刻専攻卒業。
展覧会のディレクションやコーディネート、インストール、アーカイブなどに携わりながら、現在は国際芸術祭あいち2025のテクニカル・コーディネーターを務めつつ育児奮闘中。
主な活動としては、「タイムライン」(2019/京都大学総合博物館/京都/企画出品)や「向三軒両隣」(2017-/秋田/ディレクター)、「クロニクル、クロニクル!」(2016-2017/CCO/大阪/ディレクター)など。