アーティストになるためには、いろいろな方法がありますが、ノーマルルートは1歩づつ着実に発表を重ね、実績を積み上げていくというもの。少しずつでも見てくれる人、評価してくれる人を増やしていって、ステップアップ。目指すべき場所を探して思考錯誤の繰り返しです。目指すゴールも違えば、道に迷ったり、戻ったり、いろいろあるのが創作人生。そんな人生を送ろうとするアーティスト、アートマネージャーを目指すみなさんのために、必要な基礎知識をご紹介します。
初回は、絶対にアーティストのみなさんに知っておいて欲しい、地味だけれど大切な基礎知識=「フライヤーやウェブに載せるべき情報について」です。
初めて自分で考えてフライヤーやWEBを作るという人は、以下のことに気をつけてみてください。フライヤーやウェブは、あなたの活動や発表の機会を観客に伝達するための手段ですが、実は作品の発表が終わった後も、アーティスト活動を継続するための重要な証明資料になります。
日時と場所は必須
そんなの当然だろう、と思われる方もいらっしゃると思いますが、実は慣れない人が作るフライヤーって、知っている人にしかわからない書き方になっていることが多々あります。さらに、フライヤーが出来上がったら、そこに載っている情報をSNSやウェブにも掲載しますよね。何なら、フライヤーの画像だけで広報している人もお見かけします。フライヤーに日時を書き忘れるなんて、と思われるかも知れませんが、画廊の開廊時間の記載がないとか、よくあるのは実施年が入ってないというもの。何年に開催したかなんて書く必要ないんじゃないの、と思われるかもしれませんが、入れておいた方が絶対に後で役に立ちます。長く、たくさん活動すればするほど、いつ・どこで行なったものかは複雑に記憶の海に沈んでいきます。日時と場所は、見にきてくれるお客様にとっても、絶対に正しく伝えなくてはならない事ではありますが、同じように、将来、あなたのこれまでの活動を知りたいと思った有名キュレーターや、プロデューサーが、正確な情報にたどりつくためにも必須です。
また会場については、知人や友人、家族にしか来てもらうつもりがない場合はいいのですが、住所やアクセスの表記がないことが多く、「誰に来て欲しいと思って作っているんだろう」と疑問に思うこともあります。たくさんの人に見てほしい、参加して欲しいと思う場合は、初めての人でも、あるいはあなたのことを知らない人でも、辿り着ける丁寧な案内を心がけましょう。
アーティストの名前
名前が入ってないなんて!と思われる方もいらっしゃると思いますが、実は、個人で活動を始めたばかり、自分の手で配れる範囲にしか配らないという方は、名前を入れ忘れる、ということもあるようです。直接本人から手渡された人には伝わっても、それ以上には広がらないので、日時と会場以外に「誰の」という情報は必須です。そしてもう一つ、気をつけたいのは、アーティスト名の表記方法です。本名ではなくアーティスト名で活動をする場合、名前の書き方を微妙に変える方がいらっしゃいます。同じ人が継続して活動している、ということ証明するためには、名前の一致は必須です。ひらがなとカタカナ等、微妙に違っても、あれ?と不審に思うもの。名前については襲名などの場合をのぞき、できるだけ継続するのが望ましいです。
また、アーティスト以外で、キュレーターやテクニカルスタッフなどの活動をしている場合、規模の大きなフェスティバルや公演などでは、アシスタントやインターン、テクニカルスタッフ等の、すべての関係者の名前がクレジットされないという問題にぶち当たることもあります。芸術や文化に関係する仕事を続けたいと思っている場合はできるだけ、自分の活動が記録されるように心がけましょう。もちろん、大きなイベントになるほど、末端のスタッフの名前まで載せられない、ということもありますが、諦めないで、次に繋げて行くことが重要です。
クレジット
クレジットって何?と思う方もいるかもしれません。クレジットカード等の借款という意味ではなく、芸術の世界では、スタッフやキャストの名前や役割の一覧のことをクレジットと呼びます。(写真に付いているクレジットは著作権者や撮影者を指しますし、書籍などの奥付を指す場合もあります。)実施する展覧会や公演、イベントが、どういう人あるいは組織で行われているものか、ということを説明するものがクレジットです。クレジットでよくある名称の違いも理解しておきましょう。
主 催 イベントや事業を中心となって実行する人や団体。全体の責任を負います。
共 催 主催者と一緒にそのイベントや事業を行う人や団体。会場を提供している場合にもこの名称を使う場合があります。
協 賛 趣旨に賛同し、主に金銭的な支援を行なっている人・団体。
協 力 何らかの形で協力してくれる人・団体。協力の形は様々で、広報や、物品の貸し出し、アドバイスなど、直接的な資金援助ではない場合等に使います。
後 援 後援名義と言ったりもするようにイベントや事業の内容については関与していないが、後ろ盾になって応援しているという場合に使う場合に使うことが多いです。
他にも企画、製作、運営など様々な名称がありますので、一度、気になった展覧会や公演のフライヤーをよくチェックしてみてください。大きな催しではなく、個人で行う個展や公演でも、主催しているのが誰なのか=責任を持つ人が誰なのか、を明確にして置くことは、事故や非難に対処するリスク管理の上でも重要です。同時に、それは作品が評価され、賞賛や名声を得る場合にも、重要なポイントになります。
加えて、フライヤーやウェブで情報を発表する前には、関係者に記載名や表記方法の確認を取ることも重要です。勝手に載せると、相手に迷惑をかけてしまうこともあるので、必ず確認しましょう。
また、補助金や助成金を得ている場合は、広報物への記載が必須になっていることも多いので、こちらも注意しましょう。
簡単におさらい!
フライヤーやウェブに載せるべき情報は、5W1H(いつ、どこで、誰が、どのように、何を行うのか。と、その理由。)が基本です。
イベント・事業タイトル なくてもいいけどあった方が雰囲気伝わる。展示か上演か、レクチャーかワークショップか、形態もわかるように。)
日 時 実施年も入っていると良い
会 場 住所やアクセス方法があると良い
参加アーティスト名
クレジット 誰が責任を持って、どんな役割で行う催しか(勝手に決めず確認をすること!)
問い合わせ先 イベント用のメールアドレスを作ることも多いです