輸送トラックが行き交う、国道9号線沿いの町「大栄町」。昭和の高度成長期に土木利権によって興ったその町も、現在、長引く不況に人々はあえいでいた。
ある日、大栄町に大川祐吉が帰ってくる。
人々は驚いた。なぜなら、かつて大火の疑いをかけて町を追い出したあの”ビンボーのユーキチ”が、二十年経った今、立派な事業家となって帰還したからだ。人々は訝しむ。しかし、祐吉は恨み言を口にすることなく、町おこしに着手しはじめる。やがて、彼のすぐれた商いの手腕によって町が再興の兆しを見せると、人々は彼の高い志を受け入れ、過去の嫌疑を侘びた。そればかりか、彼を尊び、敬うようになった。
そうして長年祐吉を悩ませていたトラウマは終了した。彼はいたく満足した。
一寸の狂いなく、すべてのもくろみが成功した。