『方丈記』は、鴨長明(1155?~1216)が建暦2年(1212)3月に執筆したもので、鎌倉時代を代表する随筆として知られており、平成24年(2012)には成立800年という大きな節目を迎えました。この『方丈記』は、世の中の無常を表現したことで有名ではありますが、京の都を襲った五大災厄を回想し
ており、近年ことに災害史のうえからも注目を集めている随筆でもあります。
大福光寺本(重要文化財)は、鴨長明自筆という伝承がある最古の写本であります。全文が漢字片仮名交じりとなっており、冒頭も「ユク河ノナカレハタエスシテシカモゝトノ水ニアラス」という表記で始まっています。全体は、序文に続き、五大災厄について詳しく述べた後に、世の住みにくさ、遁世に至る経緯、閑居の様子、自らの生き方を確認する終章という構成になっています。
歌人でもある鴨長明は、下鴨神社(賀茂御祖神社・かもみおやじんじゃ)の正禰宜惣官(しょうねぎそうかん)、長継の子。建仁元年(1201)47歳の時に和歌所の寄人(よりうど)となりましたが、50歳の時に出家して大原に籠り、のち日野の外山に移り、方丈の庵を結んで隠棲し、著述に勤しみました。
今回の展示では、大福光寺本(重要文化財)を中心に、関連する資料および同時代の漢字片仮名交じり文の書跡などを合わせて展示します。