作品紹介
田村一は天草の磁器土を使い、「土の変性、轆轤の表現をどのように拡張するか」をテーマに、青磁と白磁の器を中心に制作しています。磁器特有のシャープで透明感のあるマットな地肌と、鎬(しのぎ)や轆轤目(轆轤を回転させて周回条につけられる痕)によって生み出されるリズミカルな陰影、またその溝に流れ入った釉薬がみせる露のような艶めきや滲みが、浮遊感のある優しい表情を生み出しています。特に南宋青磁を彷彿とさせる透き通った水色の釉薬は、作家が学生時代から配合の研究に取り組んでいる思い入れのあるものだと言います。轆轤で成形されたあとに大きく口縁を歪めたり、切り込みをいれたり、貼り合わせてできる有機的なフォルムの器は、海をたゆたう海洋生物や貝殻、植物のようでもあります。近年は深鍋やジンギスカン鍋といった耐熱陶器、土に赤い顔料を混ぜた淡いピンク色のシリーズなど、精力的に表現の幅を広げています。
展覧会について
本展では、冬の凍てつくような冷たさや、寒くて切れるような鋭さをテーマにした新作の器の他、カップ、ボウル、お皿など、約200点を展示いたします。オブジェのような佇まいを持ちながら、生活にしっくりと馴染む田村の作品を、この機会に是非ご高覧下さい。
オープニングレセプション:12月14日(金) 18:00〜20:00
アーティスト・トーク:12月14日(金) 17:30〜18:00