メキシコを拠点に活動するナオミ・リンコン・ガヤルドによる『ホルムアルデヒド・トリップ』を、上映パフォーマンスと展覧会の2つの形式で紹介します。(日本初演/初展示)
自らを「グローバル・サウス出身の有色のクィアで脱植民地のフェミニスト、ビジュアル・アーティストで、抜け目ない研究者」と語るガヤルドは、近年、人種・民族・ジェンダー・セクシュアリティ・階級といった様々な権力関係を交差的に分析し、リサーチにもとづき神話的な世界観を練り上げています。
2017年に発表された本作は、先住民の土地や女性の権利を守るために活動し、2010年に凶弾に倒れたベティ・カリーニョ(1973-2010)が冥界を旅する物語です。新大陸の探検家によってホルマリン液で保存されたアホロートル(メキシコサンショウウオ)がガイドとなり、過去と現代におけるネオコロニアルな環境をたゆたう亡霊や精霊たちと共に、視る者を黄泉の国の旅路へと案内します。
※本プログラムは、京都精華大学が2021年度より実施している「マイノリティの権利、特にSOGIをはじめとした〈性の多様性〉に関する知識と、それらを踏まえた表現倫理のリテラシーを備えたアートマネジメント人材育成プログラムの一環です(文化庁「大学における文化芸術推進事業」)。2023年度は総合タイトルを「あなたの隣を歩く人がいる」とし、ワークショップ、レクチャーシリーズ、上映パフォーマンス/展覧会他を開催しています。
https://tonari-aruku.kyoto-seika.ac.jp/
◆アーティスト・プロフィール◆
ナオミ・リンコン・ガヤルド Naomi Rincón Gallardo
メキシコシティとオアハカを行き来して暮らし、活動する。脱植民主義的クィアの視座から、リサーチに基づきつつ批判的観点を取り入れた神話的な世界観を練り上げ、ネオコロニアルな環境における対抗世界の創造について考えている。近年の展覧会に「ツィツィミメ三部作」(2023年、La Casa Encendida、スペイン)、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ(2022年、イタリア)、第34回サンパウロ・ビエンナーレ(2021年、ブラジル)他。
https://www.naomirincongallardo.net/
◆ライブミュージシャン・プロフィール◆
サン・チャ San Cha
シンガーソングライター。本能に訴えかけるような情熱的でエモーショナルなライブ・パフォーマンスで知られる。スペイン語で「愛人」を意味する「サンチャ」を芸名の由来とするが、カトリックの伝統において男性の聖人に冠される語「サン(聖)」のイメージも重ねている。メジャーな会場からアンダーグラウンドなロケーションまで、サンフランシスコやオークランドの様々な場所でパフォーマンスを行い、経験を積む。2015年にロサンゼルスに移住し、クンビアやランチェラ音楽、ゴスペルの影響を受けたオリジナル曲を演奏するグループSan Cha y Las Sirenasを結成した。
https://www.churchofsancha.com/
ダニシュタ・リヴェロ Danishta Rivero
カリフォルニア州オークランドを拠点とする即興音楽家、パフォーマー、サウンドアーティスト。肉声にヘビーなプロセシング処理をかけて生成される結果と、そのアコースティックな共鳴とのかかわりに関心を持つ。Caribay[カリバイ]名義でのソロ活動の他、ジェイコブ・F・フーレとのエレクトロ・アコースティック・デュオVoicehandlerやアレクサンドラ・ブシュマン゠ロマンとのフェミニスト・トロピカルノイズ・デュオLas Suciasとしても活動する。
http://www.danishtarivero.com/