理想と現実、未来と現在は、常に隣り合わせにある
現在とその30年前。2つの時間軸がひとつの舞台の上で映画の画面割りのように現れ、同時に進行していく。一方は2020年。主人公のマヌエルは、貧困地区の少年をとらえたドキュメンタリー映画で脚光を浴び、そのキャリアを飛躍させていく。もう一方は2050年。長く暮らした海外からブエノスアイレスへと戻ってきたマヌエル。そこで、過去にうまくいかなかった人々や場所との関係を再構築しようと試みるのだが……。
本作に描かれるのは、おかしく、そして悲しいひとりのアーティストの人生だ。あるいは、観客席に座る私たちの世界に引き寄せるとしたら、私(たち)が「こうなりたい」と思う自分と、実際に私(たち)がどうなったかの間にある“致命的な違い”を描いたとも言えるだろう。
大掛かりなセットや緻密な会話構成で、演劇の構造を幻想的なフィクションへと昇華するマリアーノ・ペンソッティ。世界30都市以上で公演を行ってきた屈指の劇作家・演出家が、日本で初の劇場公演を行う。その作品世界をじっくりと堪能したい。
KYOTO EXPERIMENT ウェブサイト
https://kyoto-ex.jp/shows/2023_mariano-pensotti/
主催:KYOTO EXPERIMENT、京都芸術大学 舞台芸術研究センター
後援:アルゼンチン共和国大使館
特別協力:ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
協力:EU・ジャパンフェスト日本委員会
マリアーノ・ペンソッティ Mariano Pensotti(ブエノスアイレス)
アルゼンチンの作家・演出家。1973年生まれ。ブエノスアイレス、スペイン、イタリアでビジュアルアーツと演劇を学ぶ。2005年に、舞台美術家の Mariana Tirantte、音楽家の Diego Vainer、プロデューサーの Florencia Wasser と共同でカンパニー Grupo Marea を立ち上げた。ペンソッティ自身がテキストを執筆・劇場での上演を想定し、俳優たちとの共同作業をベースにした演劇作品と、公共空間において虚構と現実を明確に対比させることを意図した、サイトスペシフィックに展開するパフォーマンス作品を並行して発表している。ペンソッティは過去12年にわたり劇作家・演出家として15以上のパフォーマンス作品を手がけた。近年の作品に、『Los Años』(ルール、2021)『El Público 』(アテネ、2019)『Diamante』(ウィーン、2019)『Arde brillante en los bosques de la noche』(ベルリン、2017)がある。ペンソッティは世界的に最も名高い演出家の1人であり、世界の30以上の都市で作品を発表している。