川村悦子個展「草木繁るところ」

ジャンル
  • 美術
形 態
  • 展覧会
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イムラアートギャラリー京都では10月5日より川村悦子個展「草木繁るところ」を開催致します。現在京都造形芸術大学教授を務める川村悦子の約4年ぶりの個展となります。

自然とひたむきに向き合い、「見る」ことを通して植物の力強さと儚さを描き続ける川村悦子。 今回の展覧会では、私たちの日常の中でひっそりと、しかし力強く存在する草花の姿を描きます。 デフォルメや抽象化を用いず、目の前の対象を確かめるように見つめ続ける彼女の制作過程を通し現れる草花は、私たちに薄れていく記憶を思い起こさせるように、静かな物語を感じさせます。

生命を見つめる洞察力と卓越した描写力により生まれる川村悦子の情緒豊かな造形世界を是非ご 高覧ください。

展覧会初日のオープニングレセプションでは、関西日仏学館主催「ニュイ・ブランシュ」※にちな み、フランス・バカラ社のアンティークグラスでシャンパンをお楽しみいただきます。作品を前に 作家と共に楽しい夜のひと時をお過ごしください。

※ニュイ・ブランシュKYOTO2012~パリ百夜祭への架け橋~ ― 現代アートと過ごす夜 ―
ニュイ・ブランシュとはパリ市が毎年10月に行うアートイベント。街の至る所で現代アートを楽しむことが出来るこの祭典 をパリ市の姉妹都市・京都でも昨年より開催。

現実は尽きせぬ魅力にあふれている。私の住む家の庭にも、近くの公園にも、工事現場の塀の前にも、草木がひっそりと棲息している。手折れたり、踏まれたりしてもどんどん繁茂し、私たちの生活に静かに寄り添っている。

ある日、高層ビルの階下に広がる景色をずっと眺めていて、遠くに黄色い色彩のかたまりを見つけた。その辺りが何故か浮いて見える。下に降りて散歩しながらその正体を探した。
コンクリートの塀づたに仲良く風にふかれて菜の花が群生していた。それらは時折ざわめくように大きく揺らいで、ささやかに黄色い色彩を主張する。ごく普通の景色のなかに黄色や緑色が重なった時、ふとその色彩を、そこに在る何かををもっと知りたいと思った。そう思ったのは私の絵描きとしての直感だろうか。

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現実は尽きせぬ魅力にあふれていていて、それがありのままの現実だからこそ、地図を広げたように速やか に眼に入る。しかし対象を認識した時、頭でさっとわかるのではなく、対象から感じたものを手がかりに肉体的 (手、眼、精神)に受容しようとつとめたい。直感は自分だけのものだから、その一瞬のひらめきが一体何かを時 間をかけて辿って行きたい。目の前でちゃんと見たはずのものを、その時の感興を描写していく事で辿っていくのは矛盾した行程かもしれないが、しかし菜の花や草木を何故描こうとするのかを自分で確かめるために、描きながらそれを見る「私の眼」が現れるのをひたすらに待ちたいと思うのだ。

今回のテーマ「草木繁るところ」は題名だけが先に出来上がっていた。へんなもので、そういう小説があるわけでもなく、詩歌に触発されたわけでもない。私の中で記憶として蓄積されたものがあるとすれば、近くの公園 のぼうぼうと生い茂る草木の背の高さや、風もないのに木々のざわめきにはっと空を見上げたことなど、とるに たらぬ体験だ。それは言葉にすると安っぽくて恥ずかしいが、何か風景の切ない音のようにも聞こえた。街並は どんどん整備され、人の手によって理想社会が求められ築かれて行く一方で、忘れらていく風景も多い。いいかえるなら、忘れさられた公園や、使われなくなった橋の一隅には、消えゆく運命への静かな諦観が宿っているように思えた。しかし眼のまえに広がるこれら風景は私にはひどくおおらかに感じられる。人々がここで交差した 時間と思い出はいたるところその痕跡を残し、その隙間を縫うようにたくましく草木が顔を見せる。生活環境がどんなに変化しようとも、あるがままの状況を受け入れる、深々とした時間に寄り添うそれら草木繁る光景が私 を圧倒したのかもしれない。

川村悦子

オープニングレセプション:2012年10月5日(金)18:00〜22:00

イベント情報

日時
2012年10月5日(金)~ 2012年11月10日(土)
11:00~19:00
毎週日曜、月曜、祝日休み
場所
[左京区]
イムラアートギャラリー京都
〒606-8395 京都市左京区丸太町通川端東入東丸太町31

http://www.imuraart.com/ja_about_us.html

料金
無料
URL
http://www.imuraart.com/ja_ex1120_etsuko_kawamura_exhibition.html
問合せ先
イムラアートギャラリー京都 075-761-7372
※内容は変更になる場合があります。詳細は各イベント主催者にお問い合わせください。
※チケットや申込みが必要なものは、売り切れあるいは定員に達している場合があります。ご了承ください。