井上亜美「The Garden」

ジャンル
  • 美術
形 態
  • 展覧会
人と生物がせめぎ合う「庭」という小さな世界へ
Co-program2022カテゴリーB採択企画

本企画は京都を拠点に活動するアーティスト、井上亜美による個展です。
井上はこれまで狩猟や養蜂を通して、人間と生物が生きる環境へと目を向けた制作活動をおこなってきました。本展では過去作品に加え、自身のアトリエの庭の細やかな観察から日々生まれてきた新作を展示します。


■展覧会ステイトメント
私が庭のアトリエに出ると、人間以外の複数の目線を感じる。

暖かい日、フジバカマの蜜を吸いにくる蝶。
どうして、ここに花があるとわかるのだろう。
虫取り網で捕まえて標本にしてみる。
鱗粉が手に付き、翅から光沢が消えてしまった。

私が美しいと感じたのは蝶だったのだろうか。
それとも鱗粉だけを見ていたのだろうか。
捕まえたようで、その正体はつかまえることができない。

日が暮れると一斉に鳴きはじめる虫たち。
私の作った昆虫標本は、夜の間に何者かに喰われている。
彼らのすがたを見たことはないのだけれど――気配を感じる。
掴めそうでつかめなかった、輪郭が浮かびあがってくる。

その感覚は、暗室での現像作業に少し似ている。
電気を消すと、はじめににおいを感じる。
部屋の外のかすかな虫の音が聴こえてくる。

じっとする。耳を澄ませる。情報を手放す。
ふと、そのすがたが目に映りこんでくる。

これまでの感覚から自由になるとき、
私は少しだけ虫や動物たちの世界に足を踏み入れる。

井上亜美

■井上亜美 INOUE Ami
1991年宮城県丸森町で生まれる。2014年京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)こども芸術学科卒業。2016年東京藝術大学大学院映像研究科修了。2016年より2019年までHAPSスタジオに滞在。現在、京都芸術大学非常勤講師。京都の山里近くのアトリエを拠点とし、生活の一部として狩猟や養蜂などを実践しながら制作を行う。生き物たちが生きる場所に入り込むことで、その姿や人間との関係性や距離感を捉え、写真や映像、インスタレーションなどの手法で表現する。近年の主な展覧会に「ウルサン現代美術祭 From Now to Now」(2022年、蔚山広域市/韓国)、個展「The piercing eyes」(2019年、Amado Art Space、ソウル市/韓国)、「第21回シドニービエンナーレ」(2018年、コッカトゥー島/オーストラリア)。


《じいちゃんとわたしの共通言語》映像3分43秒、写真、2016

イベント情報

日時
2023年1月7日(土)~ 2023年2月12日(日)
10:00-20:00
場所
京都芸術センター ギャラリー北・南
京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2

料金
無料
URL
https://www.kac.or.jp/events/32784/
問合せ先
京都芸術センター
TEL:075-213-1000
FAX:075-213-1004
E-mai:info@kac.or.jp
※内容は変更になる場合があります。詳細は各イベント主催者にお問い合わせください。
※チケットや申込みが必要なものは、売り切れあるいは定員に達している場合があります。ご了承ください。