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【KEX】ミーシャ・ラインカウフ 「Encounter the Spatial — 空間への漂流」
ジャンル
美術
形 態
展覧会
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2022
見えない境界を探る
徒歩、潜伏、遊び
海底に積もる砂を巻き上げながら、前方を見据え、ゆっくりと歩くミーシャ・ラインカウフの後ろ姿。作家がとらえようとしているのは「国境」という不可視の線だ。ここは、イスラエルとヨルダン、エジプト、あるいはジブラルタル海峡のスペインの飛び地セウタとモロッコのあいだ。本作《Fiction of a Non-Entry(入国禁止のフィクション)》は、越境困難な陸路ではなく人の手の及ばない海底で、その境界を実際に跨ごうと歩き続ける作家自身のドキュメンタリーでもある。
また、ラインカウフは東日本大震災直後の東京を起点に、ロシア、モンゴル、アテネ、ウィーン……と移動を繰り返し、各都市の安全性を担う巨大インフラ=地下水路や下水道、シェルターなどに潜ってきた。その暗闇から外の世界を見つめた作品《Endogenous Error Terms(内生的エラー)》も同じく展示される。
現代アートの文脈では、ブルックリン橋に掲げられていた星条旗を白旗に変え、その様子をマティアス・ヴェルムカとともに映像作品とした《Symbolic Threats》が有名だろう。本展では、都市や国家における物理的空間のはざま、大きなコントロールシステムの歪みで遊ぶ作家の、新たな探求をのぞき見ることができる。