本展『先見の形骸団子:Creating foresight through unity』は、2021年に京都府南丹市八木町に残る旧酒造を会場に開催した、田中秀介(たなか・しゅうすけ)による展覧会「馴れ初め丁場:Beginning of love」を、パルクの空間に(再)構成・(再)起動させるものです。
酒造りの場であった旧酒造の会場に、田中はいわゆる矩形の作品(正方形や長方形)だけではなく、変形作品を多く持ち込みました。背景として場や時間といった「状況」が描かれる矩形の作品と違い、対象物のみが描かれている変形作品は、ある時間・ある場所を切り抜き、異なる時空に貼り付けたかのようであり、絵は展示される状況(空間)に密接に関わることとなります。そして鑑賞者は『絵に描かれた状況』を想い、『この場所と絵との関わり』を探し、『今、目の前に広がる絵と場そのもの』を楽しむこととなります。
本展は、旧酒造という特徴的な空間に、変形作品として異なる時間・空間を切り取った絵が関わることを目論んで制作された作品群を、今度はギャラリーという空間・時間に持ち込んで(再)展開させるものであり、「絵画」にとっていわば日常空間ともいえるギャラリーという空間において、それぞれの絵がどのように振る舞うのか、あるいは旧酒造という空間をどのようにギャラリーに持ち込むのかについての試みといえます。
また、かつて(2021年)の展覧会に取材して制作した記録映像・記録集をあわせてご覧いただくことで、記録が、過去と現在・記録と記憶の曖昧な重なりに自立し、鑑賞者の発見や想像を促すことで、そこに作品や表現を「ひらきつづける」ことの可能性を体感いただけるのではないでしょうか。