遠山由美 個展「33の音をかく」

ジャンル
  • 美術
形 態
  • 展覧会
 これまで関東を拠点に活動してきましたが、このたび縁あって、京都で滞在・制作させていただきました。制作の場所は室町蛸薬師の京都芸術センター、なのでそこを中心centerに、33日かけて、毎日ひと筋ずつ東西南北に範囲をひろげ、歩いて周回することにしました。

 意味をもとめすぎず、ただ見えるもの、聞こえるものを、そのまま受けとめるようにして、流れるように歩いてみたかった。陶芸家の河井寛次郎氏の言葉には「手考足思」というものがあります。

 わたしはこれまで、自分の手をつかって文字をかくことで、言葉に向きあい、言葉を反芻するように作品をつくってきました。今回は、自分の足をつかって歩くことで、その日その時にみえてきた音を、その日のうちに、33の円でかきとめることにしました。

 初日には京都芸術センター制作室の中を一巡することからはじめ、毎日その外側を歩きます。その日のルートを朝、確認したら、あとは道中に専念する。真っさらな一枚をあらたにかき始めるつもりで、33日を過ごしてみる。そうして自分に何か変化がおこるかどうかを、確かめてみたかったのです。

 天候や体調、ときに社会情勢の影響をうけつつ、最終的に、北は鞍馬口、南は東寺、東は清水寺、西は西大路通まで周り、33日間で歩いた距離はおよそ352キロ、直線距離にするとほぼ、東京まで行ったことになります。

 実際にそこに足を運ぶことで得る気づき、そのひとつひとつは断片的で、こぼれ落ちてしまいそうに、些細なものかもしれません。言葉になる手前の、作為のない雑音のようなものを、その日のうちに記録record、かたちにしました。

 どれくらい自分の頭を空っぽにし、曇りのない、澄んだ見方に近づけるか、という、引き算の試みといえるでしょうか。

 日々歩くうちに、自分の周りに感じられていた、なにか柵のようなものが、次第に広がり、遠ざかるような気がしていました。今は、33日間で終えるつもりだった道行が、じつはどこまでもつづく道の、とば口にすぎなかったのか、とも感じています。

                              2021年6月  遠山由美


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遠山由美 Yumi Tohyama

文字美術作家。
東京都生まれ。ことばのはざまにあるニュアンスを可視化しようと、独自のスタイルで平面作品を制作している。
1990年代後半より日本語と英語によめる両面文字 Dual Letterを創作し、短歌や詩文など翻訳の際に失われる部分を形にしようと、古典や文学、心経などを両面文字にしていく。以来、言語のちがい、ことばのはざま、自他のあいだ、自分の中心へと対象は移りつつ、見えにくい何かをかたちにしようと試みている。東京を拠点に、長野県飯山市をへて滋賀県大津市で制作する。

イベント情報

日時
2021年6月22日(火)~ 2021年6月27日(日)
12:00〜19:00
*最終日は17:00まで
場所
[中京区]
同時代ギャラリーBis
京都市中京区三条通御幸町通東入弁慶石町56 1928ビル2F

料金
無料
URL
https://yumi-tohyama.com/info/
問合せ先
info@yumi-tohyama.com
※内容は変更になる場合があります。詳細は各イベント主催者にお問い合わせください。
※チケットや申込みが必要なものは、売り切れあるいは定員に達している場合があります。ご了承ください。