平野一郎×前田剛志
時ノ祀リ二〇二〇
臨時祭ストリーミングα
〜音楽と美術による〈しつらへ〉と〈おこなひ〉〜
巫:吉川真澄
***
[日時]
2020年9月22日【火祝・秋分】
13:00〜20:00†
Youtube LIVE配信(無料)
時ノ祀リチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCMvq3Td1uormkNXIoZrsVLg/
[演奏]
平野一郎 作曲
女声独唱の為の《四季の四部作》
†春の歌13:30頃/夏の歌15:30頃/秋の歌17:30頃/冬の歌19:30頃
[展示]
前田剛志 作
造形『七十二候』
***
主宰:平野一郎
企画制作:時ノ祀リ協働体
録音協力:WAONレコード
会場協力:美山FUTON&Breakfast美十八
衣装デザイン・パターン:岩城恭平
クチュリエ:山口健治
*本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市文化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。*
/////////////////////////////////////////////////////////////////////
=企画概要=
● “時ノ祀リ”は、作曲家・平野一郎と美術家・前田剛志の対等の協働による、音楽×美術の横断企画。〈しつらへ〉と〈おこなひ〉をキーワードとして、〈時〉そのものをまつる架空の祭祀を、芸術という別世界にひらきます。唯一無二の体験を通して、四季・二十四節気・七十二候に彩られたかけがえのない/失われつつある私たちの風土との交感を、偲び・寿ぎ・甦らせることを目指します。
●COVID19の大流行に世界が浸された今年、私たちの列島でも各地の祭礼の中止や縮小が相次いでいます。疫病退散の祭であっても例外ではない未曾有の状況の中、むしろ人々の風土と息災への祈りはかつてなく切実なものとなって浮かび上がっています。場の共有=臨場は封じられた。しかしネットワークの発達した今日なら、かろうじて時の共有=臨時は可能である…そうした非常な現況に発したある問いかけと希いを籠めて、【時ノ祀リ二〇二〇臨時祭】を密かに催し、ライヴ配信を行います。
●時間は秋分の日の昼から夜、場処は“森の京都”こと山深い丹波國・美山郷の茅葺きの古民家〈美十八(みとや)〉にて。登壇は声楽家・吉川真澄ただひとり。無観客の会場での春/夏/秋/冬を巡る祭祀、その“しつらへ”と“おこなひ”。造形作品『七十二候』に刻まれた兆しに瞳を凝らし、歌い手の身体を依代とした《四季の四部作》に万象の声を聴く…なにものかに奉じられる山里での知られざる秘儀をこっそり覗き見るように、うつろいたゆたう時の流れに身を委ね、私たちの来し方・行く末に深く遠く想いを馳せ、魂を遊ばせてください。
=作品紹介=
□女声独唱の為の《四季の四部作》The Seasons Tetralogy
無伴奏女声の為の四部作「春の歌」「夏の歌」「秋の歌」「冬の歌」は、声楽家・吉川真澄氏の委嘱によるものである。打診を受けたのは2013年、初演を定めぬ無期限の依頼だったが、14年3月思いがけず「春」の着想が訪れたのに始まり、その後はまさに季節の廻りに導かれるように次々と生まれて来た。そうして出来た連作は、奏者の身体をいわば依代【よりしろ】として、此の風土に響く様々な音声【おんじょう】の淵源を辿ると同時に、特殊発声やボディ・パーカッションを含む表現の可能性を追求する極限の歌となった。唯一無二の表現者・吉川真澄によって各地で再演を重ね、様々な方面からの反響が続いている。
□造形『七十二候』The 72 Climates
七十二候は、古代中国で発祥し奈良時代に日本に伝えられた暦法のひとつ。二十四節気をさらに三等分することで一年が七十二の「候」に区分され、それぞれの名称は、動植物の様態や大気の変容を細やかに捉えた短文となっている。例えば、「桃始笑」、「腐草為蛍」、「朔風払葉」、「虹蔵不見」というように、風土の中で育まれた深い観察力と豊かな感性が結晶している。しかし、明治にグレゴリオ暦(太陽暦)が導入されて以降、七十二候に秘められた暦の本来の役割、自然への細緻な眼差し、季節と暮らしの多様な関係は失われつつある。
七十二個の造形作品である本作は、自然観察や歳時記の参照にはじまり、暦の発祥に関わる稲作、それと共に興った祀りの起源、果ては古代の葬送儀礼などから蒐集された題材を元に、それぞれの候に形が与えられ、色彩が施されている。歴史に埋もれてきた七十二候に、新たな詞【ことば】が与えられた作品群。
=略歴=
■吉川真澄(ソプラノ)YOSHIKAWA Masumi
岸和田生まれ。相愛大学音楽学部声楽専攻卒業。桐朋学園大学研究科声楽専攻修了。文化庁国内芸術インターンシップ研修生。間宮芳生作曲オペラ「ポポイ」の世界初演(田中泯演出)、平野一郎作曲モノオペラ「邪宗門」「八幡大縁起」をはじめ多くの作品の初演を務める。2003年より佐藤紀雄(ギター)と〈DUOうたほぎ〉を結成。2012年より大須賀かおり(ピアノ)と〈デュオORIGAMI〉を結成し、演奏機会の少ない作品の演奏や新作童謡を委嘱初演するなど、日本語の歌を歌う事に力を注いでいる。幅広いレパートリーによる独自のプログラムには定評があり「音楽の友」誌上で“絶対に聴くべきアーティスト2017”に選ばれる。作曲家平野一郎に女声独唱曲「四季の四部作」を委嘱するなど独創的な活動を展開。コロナ禍においてアカペラ、朗読、弾き歌いで構成される“ひとりっきりのコンサート”プロジェクトを始動。CDは「Pop Song」「うたほぎvol.1〜3」(以上ジパングレーベル)「四季の四部作」(ワオンレコード)“レコード芸術・ステレオ・オーディオアクセサリー各誌で特選盤に選出”等がある。松方音楽大賞受賞。三菱UFJ信託音楽賞奨励賞受賞(オペラ「ポポイ」公演)、佐治敬三賞受賞。東京混声合唱団レジデントメンバー。
■前田剛志(美術家)MAEDA Takeshi
奈良県香芝市出身、明日香村在住。京都市立芸術大学大学院美術研究科造形構想専攻修了。École nationale supérieure des beaux-arts(パリ国立高等美術学校)へ留学。パフォーマンス、映像、メディアアートの分野での活動を経て、2011年以降は絵画と造形作品を中心に制作活動を行っている。これまで、仙台メディアテーク、金沢21世紀美術館、堂島リバーフォーラム「堂島リバーアワード2016」、大阪大学総合学術博物館「前田剛志展 ─明日の記憶」等で作品を発表。メディアアートユニットの活動として、京都国立近代美術館「生存のエシックス」、中国・深圳画院「深圳国際水墨双年展」等に出展。音楽家とのコラボレーションでは、シアターピース「生命の舟」(しが県民芸術創造館)、モノオペラ「邪宗門」(京都青山音楽記念館バロックザール、ザ・フェニックスホール、いずみホール)、音楽+映像+茶会「奏でる水」(京都芸術センター)等の舞台映像を担当。
■平野一郎(作曲家)HIRANO Ichirô
丹後國宮津出身。京都市立芸術大学卒業、同大学院修了。在学中より各地の祭礼と音楽を巡る踏査を行う。2001年より作曲活動を本格開始、京都を拠点に日本の風土や伝承に根差した創造を展開。日本交響楽振興財団作曲賞最上位・日本財団特別奨励賞、青山音楽賞、京都市芸術新人賞、藤堂音楽賞等受賞、ISCM世界音楽の日々2008ヴィリニュス大会入選。11年演奏家・美術家と〈音色工房〉結成、モノオペラ「邪宗門」初演。13年細川忠興公・ガラシャ夫人生誕450年記念演奏会“祈りのガラシャ”17年京都芸術センター主催“四季の遊び”等企画・監修。10年「鱗宮交響曲」(芦屋交響楽団)11年「いそぽのふゎぶらす」(ザ・フェニックスホール)14年「二重協奏曲〈星巡ノ夜〉」(舘野泉)16年「八幡大縁起」(やわた市民音楽祭)17年「鳥ノ遊ビ」(通崎睦美)「綺多羅」(大萩康司)18年「胡絃乱聲」(国立劇場)19年「とこよのはる」(森の会)等委嘱作品多数。17年より出雲芸術アカデミー/コンポーザー・イン・レジデンス拝命、“出雲の春音楽祭”にて《連作交響神樂》進行中。19年正月NHK8K《落慶〜奈良・興福寺》音楽制作。就中、無伴奏女声独唱の為の「四季の四部作」(2014年吉川真澄委嘱)は大きな反響を呼び、同連作を軸とする協力公演“DUOうたほぎリサイタル”が佐治敬三賞受賞、音楽×美術×考古学“四季の考古楽/うたひかたらひ春夏秋冬”がメルキュール・デザール年間企画賞第3位、音楽×美術“時ノ祀リ二〇一九”(大東市サーティホール共催)開催、CD『平野一郎《四季の四部作》春夏秋冬』(waon records)がレコード芸術・stereo・オーディオアクセサリー各誌で特選となる等、その協働が様々に実を結んでいる。令和元年度・京都府文化賞奨励賞受賞。