『ゴドーを待ちながら』で知られるサミュエル・ベケット(1906-1989)は、文学や演劇ばかりでなく、アート、音楽、映画、ダンスなど、さまざまな芸術領域に大きな影響を及ぼしています。世界中で人気がある彼の戯曲は、しかし最近の日本では上演の機会が少ないようです。そこで、30回目の命日に当たる12月22日前後に、代表作の映像を集めて上映することにしました。作品を解説するトークやシンポジウムに加え、ベケットに影響を受けた現代アーティストのアートブックも展示します。20世紀最大の小説家、劇作家、詩人と呼んでも過言ではない巨匠の世界をお楽しみください。
【上映作品】
[A]
『ゴドーを待ちながら』
監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ 出演:バリー・マクガヴァン ジョニー・マーフィー
[B]
『エンドゲーム』
監督:コナー・マクファーソン 出演:マイケル・ガンボン デヴィッド・シューリス
[C]
『クラップの最後の録音』
監督:アトム・エゴヤン 出演:ジョン・ハート
[D]
『ハッピーデイズ』
監督:ジャン=ポール・ルー 出演:マドレーヌ・ルノー レジス・ウタン
[E]
『プレイ』
監督:アンソニー・ミンゲラ 出演:アラン・リックマン クリスティン・スコット・トーマス ジュリエット・スティーヴンソン
『ねぇ、ジョー』
監督:ミシェル・ミトラニ 出演:ジャン=ルイ・バロー マドレーヌ・ルノー
『わたしじゃないし』
監督:ニール・ジョーダン 出演:ジュリアン・ムーア
[F]
『フィルム』
監督:アラン・シュナイダー 出演:バスター・キートン
『クワッド』
演出:サミュエル・ベケット
『ブレス』
監督:デミアン・ハースト
【上映スケジュール】
◎12/20(金)
18:00 開場/18:15-[A]『ゴドーを待ちながら』(トーク付き。20:30終映予定)
◎12/21(土)
10:00開場/10:15-[A]『ゴドーを待ちながら』(12:15終映予定)
13:00開場/13:15-[B]『エンドゲーム』(14:40終映予定)
14:55開場/15:10-[C]『クラップの最後の録音』(16:10終映予定)
16:30開場/16:45-[D]『ハッピーデイズ』(18:15終映予定)
18:30開場/18:45-[E]『プレイ』『ねぇ、ジョー』『わたしじゃないし』(19:35終映予定)
◎12/22(日)
10:15開場/10:30-[B]『エンドゲーム』(11:55終映予定)
12:45開場/13:00-[C]『クラップの最後の録音』(14:00終映予定)
14:15開場/14:30-[F]『フィルム』『クワッド』『ブレス』(トーク付き。各作品2回鑑賞。16:30終映予定)
16:45開場/17:00-18:30トーク「ベケットと現代アート」(出演:金氏徹平+田村友一郞 司会:小崎哲哉)
18:45開場/19:00-[A]『ゴドーを待ちながら』(21:00終映予定)
◎12/23(月)
10:15開場/10:30-[F]『フィルム』『クワッド』『ブレス』(トーク付き。各作品2回鑑賞。12:30終映予定)
13:00開場/13:15-[D]『ハッピーデイズ』(14:45終映予定)
15:00開場/15:15-16:15 トーク「ベケットを演じる」(出演:安藤朋子+岡室美奈子 司会:小崎哲哉)
16:30開場/16:45-[E]『プレイ』『ねぇ、ジョー』『わたしじゃないし』(17:35終映予定)
17:45開場/18:00-20:00 ラウンドテーブル「21世紀のサミュエル・ベケット」
(出演:岡室美奈子+金氏徹平+多木陽介+藤田康城+森山直人 司会:小崎哲哉)
上映会期中、10:00(20日は17:00)から終映時まで、ベケットに影響を受けた現代アーティストのアートブック展示を映像ホール外のロビーで開催いたします。ぜひお立ち寄りください。
字幕翻訳
岡室美奈子(『ゴドーを待ちながら』『エンドゲーム』『プレイ』『ねぇ、ジョー』『わたしじゃないし』)+鈴木哲平(『クラップの最後の録音』)+長島 確(『ハッピーデイズ』)
字幕作成
西原多朱(ヴュッター公園)+長崎隼人(Bart.lab)
アートブック展示構成・宣伝美術
原田祐馬(UMA/design farm)
*本研究プロジェクトはJSPS科研費 JP17H00910の助成を受けたものです。
*上映作品の日本語タイトルと字幕は、すべて白水社版『新訳ベケット戯曲全集』の訳文を使用させていただきました。
【サミュエル・ベケットについて】
Samuel Beckett(1906-1989)
アイルランド生まれの小説家、劇作家、詩人。1920年代後半と1937年以降は、大戦中を除いてほとんどパリで暮らした。『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』によって現代文学を革新したジェイムズ・ジョイスの助手を務め、作品は英語とフランス語の両方で執筆。第2次世界大戦中はフランスのレジスタンス運動に参加し、終戦後に執筆活動を再開する。1950年代に3部作の小説『モロイ』『マロウン死す』『名づけられないもの』を上梓。1952年に、3部作執筆中の「気散じ」として書いたという戯曲『ゴドーを待ちながら』を発表する。翌年上演されて大成功し、文学・演劇界における地位を確立。1969年にはノーベル文学賞を受賞した。どの作品においても、誕生と死の間に宙吊りにされた人間の実存を主題としているが、その死生観は、悲惨な戦争体験によって形成されたといわれる。1989年、冷戦構造が崩壊したのと同じ年に死去。日本語訳は『新訳ベケット戯曲全集』(白水社)、『モロイ』『マロウン死す』『名づけられないもの』(河出書房新社)などが刊行されている。
【トーク&ラウンドテーブル登壇者プロフィール(出演順)】
◎金氏徹平(Kaneuji Teppei)
現代アーティスト。物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求し、日常の事物によるコラージュ的手法を用いて作品を制作。舞台作品にも取り組み、2017年にロームシアター京都で『tower(THEATER)』を上演。ARICA『しあわせな日々』の美術も担当した。
◎田村友一郞(Tamura Yuichiro)
現代アーティスト。既存のイメージやオブジェクトを起点にし、現実と虚構を交差させた多層的なインスタレーションやパフォーマンスを手掛ける。2017年に、ベケットの『エンドゲーム』をモチーフにした『栄光、終焉そして終演/End Game』を発表した。
◎安藤朋子(Ando Tomoko)
アクター。太田省吾と演劇活動を20数年継続後、2001年に藤田康城らとARICAを創設。国内外で新作を発表し続ける。出演作品に『水の駅』『↑』(転形劇場)、『KIOSK』『しあわせな日々』(ARICA)など。第17回カイロ国際実験演劇祭最優秀ソロパフォーマンス賞受賞。
◎岡室美奈子(Okamuro Minako)
早稲田大学演劇博物館館長、同・文学学術院教授。文学博士。専門はベケット研究、現代演劇論、テレビドラマ論。訳書に『新訳ベケット戯曲全集1 ゴドーを待ちながら/エンドゲーム』など。共編著に『ベケット大全』など。ベケットに関する論文多数。
◎多木陽介(Taki Yosuke)
演出家、アーティスト、批評家。大きく歪んだ現代世界の「歴史の創造力」の修復を目指すエコロジカルな創造力を持つ人々の活動を研究するとともに、その成果を教育その他の分野での実践に活用する。著書に『(不)可視の監獄 − サミュエル・ベケットの芸術と歴史』など。
◎藤田康城(Fujita Yasuki)
多摩美術大学で現代美術、東京都立大学でフランス文学を学ぶ。2001年4月、詩人・批評家の倉石信乃、アクターの安藤朋子らとともにパフォーマンスグループのARICAを設立。ベケットの『しあわせな日々』(『ハッピーデイズ』)を含む全作品の演出を担当する。
◎森山直人(Moriyama Naoto)
演劇批評家。京都造形芸術大学舞台芸術学科教授。京都造形芸術大学大学舞台芸術研究センター主任研究員。KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長。著書に『舞台芸術への招待』(共著、放送大学教育振興会、2011年)など。
◎小崎哲哉(Ozaki Tetsuya)
ジャーナリスト。アートプロデューサー。京都造形芸術大学大学舞台芸術研究センター主任研究員。あいちトリエンナーレ2013パフォーミングアーツ統括プロデューサー。編著書・著書に、『百年の愚行』『続・百年の愚行』、『現代アートとは何か』など。