日本刀に取り付けられた鐔(つば)・目貫(めぬき)・小柄(こづか)・笄(こうがい)などの刀装具は、太平の世といわれた江戸時代に装飾性が高まるとともに、多くの優れた装剣金工が登場します。鉄・金・銀・四分一(しぶいち)などの金属と高度な彫金技法でもって、花鳥風月や縁起物などの様々な題材が巧みに表現されました。
しかし明治時代、武家政権は終わりを告げ、さらには明治9年(1876)の廃刀令施行により、装剣金工たちは決定的に需要を失います。彼らは、刀装具制作で培った彫金技術を活かして花瓶や香炉、装身具などといった新しいものづくりに挑戦します。多彩な金属を用いた高度な彫技は、世界に類を見ず、日本の金工作品は万国博覧会でも高い評価を得て、重要な輸出品となっていきました。
本展では、苦難の時を経て明治時代を代表する彫金家となった加納夏雄(かのうなつお)、海野勝珉(うんのしょうみん)をはじめ、正阿弥勝義(しょうあみかつよし)、塚田秀鏡(つかだしゅうきょう)らの刀装具ほか金工作品を展示します。修練を重ねて作り出された名品の数々をどうぞご高覧下さい。