アール・ヌーヴォーは19世紀末から20世紀初頭にかけて西欧諸国を中心に展開した芸術運動です。当時のヨーロッパでは、効率化を図り生産が機械化され、物が大量につくられていました。また、都市部では工業化による環境破壊が進み、やがて職人の創造に対する喜びは取り上げられ、人々の物への愛着は薄れていきました。その中で人々は以前の素朴な田園生活に憧れを抱くようになり、“物への心からの愛着”、“自然に対する尊敬”という中世の精神に立ち返り始めました。
アール・ヌーヴォーの特徴として、植物と女性がモチーフとして多用されることが挙げられます。植物は、種子が発芽し、成長し、花開き、やがて新しい種子を育みます。それは、生命の流れの根源的原理とされていました。また一方で、新たな生命をその身に宿すという点で、女性も同様な存在とされていました。これらは、互いに影響し、時には共に用いられることもありました。
まず第一章では、アール・ヌーヴォーにおける動植物をモチーフとした、代表的な作品をご紹介します。第二章では、女性をモチーフとした作品を集めました。身体やその動きの有機的な曲線に注目してみて下さい。最後の第三章では、自然への強い憧れが女性に重ね合わされている作品を展示しています。
当館が所蔵する代表的なアール・ヌーヴォーの作品を中心に構成しています。この時代の自然への考え方を通して、日々の生活にある自然の魅力を感じるきっかけになれば幸いです。