テーマ「赤い糸」
まだ人がこの世に存在していなかった遠い昔から、さまざまな物質や物体そして現象は存在していて、それらは自然界の中で、関係性や連続性によって成り立っていました。
全体と部分の区分もなく、すべては調和で維持されていたのですが、のちに人は物事それぞれ個別に「名前」や「形」を定義付け、「意味」をも持たせました。
そして世界は人の認識によって形成されるようになったのです。
東日本大震災と原発事故のあと、自然と人間のかかわりや、物の発展と人の幸福、物と自然の関係などをあらためて考えるようになりました。
人の幸福のための開発が、自然破壊を生じ、結果人に不幸をもたらすことがあります。
動物を愛おしむというのも人の都合で、それは時に動物にとっては不都合な自体をおこします。
世界は人の都合によってさまざまな自体が生じます。
しかし自然にはまだまだ人智が及ばない領域や力があるのです。
元々世界は一枚の布(織物)のように明確な境目はなく、随所で密度や状態が違うものが流動的に連続していたのでしたが、人はそれを分断し、あらたな関係性をもたせるために再び繋ぎ合わせたのです。
縫い合わせが悪いと、そこからまたほころびが生じ、伝搬し、離れた別の部分にまたほころびが生じます。
あらゆる物事は単独では成立せず、物と物、物と人、人と自然は常に相対的なつながりで成り立っています。
このようなさまざまな物事のつながりを、赤い糸によって表現しました。