2011年3月11日以降、私たちがイメージする「東北」はそれ以前とはずいぶん変わってしまったのではないだろうか。そもそも「東北」とは何者として見られ、どのように自らを見せてきたのだろうか。
京都造形芸術大学の学生が企画・運営するARTZONEでは、姉妹校である東北芸術工科大学で行われているプロジェクト《東北画は可能か?》の展覧会を開催する。これは、東日本大震災が起きる前の、2009年から同大学の美術科日本画コース准教授三瀬夏之介氏と洋画コース准教授鴻崎正武氏によって始められたチュートリアル活動(教員と学生が一緒に興味、関心のあることを研究する課外活動のこと)である。
私たち、本展担当のARTZONE学生スタッフは、雪深い2月と盛夏の7月に山形市にある東北芸術工科大学をたずね、作家たちと出会った。東北の各所および全国から山形に来た彼らは、「東北」とよばれる地域での絵画そして創作活動のありかたを探り、個人制作と共同制作を行っている。広いアトリエには、東北の内と外から集まった人々の経験と感覚、東北にまつわる記号やイメージが同居し、言葉にはしがたい絵画群がそこにあった。「東北画は可能か?」という問いは、YES/NOの安易な二択で答え合わせきるものではない。重要視すべき点は問い続けるということ。いま住んでいる場所、状況、そして自分自身と対峙し続ける姿勢そのもので、彼らはまだ見ぬ「東北画」と「東北」を体現しているのかもしれない。
郊外にある東北芸工大のキャンパスからは、冬には雪に覆われ、遠近がわからなくなるほど白い市街地を見下ろせる。対照的に、夏はさわやかに空気が澄み、遠く離れた山々の形まで確かめることができる。それは視力が解放されたような感覚だった。閉ざされた冬と、解放の夏。その反復が「東北」というリズムを作り出しているのではないだろうか。
本展では、彼らの“態度そのもの”と、かの地の“閉塞と解放”を京都に持ち込みたいと考えている。それらは京都やそれぞれの地域で活動する私たち自身を問い返す視線となり、やがて様々に語られてきた東北へのまなざしを解放することへとつなげていきたい。
(京都造形芸術大学 文芸表現学科3年生 谷口 聡一)
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出展作品:共同制作4点、個人制作8点、『東北画』多数
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関連企画 :
1. オープニングトーク/「東北画」であるために
8月31日(土) 15:00〜17:00
「東北画は可能か?」参加学生+三瀬夏之介
ナビゲーター:熊倉敬聡
(京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科 教授)
17:30〜 屋上パーティ(参加費:無料)
2. ギャラリートーク/「東北と京都の美の極み」
9月23日(月・祝)15:00〜17:00
「東北画は可能か?」参加学生+三瀬夏之介
ナビゲーター:田中圭子(日本美術史研究家、京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科 専任講師)
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協力:東北芸術工科大学 & 京都造形芸術大学 芸術表現・アートプロデュース学科