実の母親に見出すアルゼンチン年代記。
劇作家で女優、ミュージシャンでもあるオールラウンダーが待望の来日
劇作家、演出家、女優、ミュージシャン…とマルチな才能を発揮して活躍するアルゼンチンのアーティスト、ロラ・アリアス。昨年、アルゼンチンが誇る作曲家のウリセス・コンティと発表したアルバムでは、音響〜ポストロック〜ポエトリーリーディングを自在に行き来して、奔放な資質が顕在化した。
一方、舞台作品は、ベルリンのイン・トランジット、リスボンのアルカンタラ・フェスティバル、アヴィニヨン演劇祭といった、ヨーロッパの主要な演劇祭、劇場で上演されてきた。昨年、ウィーンで初演された『憂鬱とデモ』(原題:Melancolia y Manifestaciones)はロラ自身の母親の手記をベースにした作品である。
ロラが生まれた1976年は、クーデターによって軍事独裁政権が生まれ、アルゼンチンの暗黒時代のはじまりとなった年。それは、進歩的な大学教授だったロラの母親にとっても、鬱々とした日々の始まりだった。激動の社会状況と身近でパーソナルな事態が重なりあう地平で、ロラは何度も母親に問いかける。「私を生んだせいなのか? 政治状況のせいなのか?」。
母と娘、国家と個人、歴史と空想、憂鬱とデモ。過酷な政治的現実が、詩的に、ときにユーモラスに、心揺さぶる表現へと変奏される。