KAB Dialogue インタビュー/対談

Vol.55

対談2017.12.24 UP

ネットワークを活用するために

アーティスト・イン・レジデンス シンポジウム2017 [第二部:ネットワークの活用]

2017年2月4日に京都市と京都芸術センターが主催し「アーティスト・イン・レジデンス シンポジウム2017」を開催しました。第二部では「ネットワークの活用」をテーマに、各地でアーティスト・イン・レジデンスのプログラムを運営する方々をお招きし、それぞれの特色あるプログラムと今後のネットワークの活用についてお話しいただきました。

第一部「移動することと創作活動」はこちら


佐々木雅幸:ちょうど大学で人工知能(AI)が人間の仕事を奪っていく、という話をしていたのですが、その実、アーティストの仕事が逆に増えるのではないかと思いました。未知の場所、未知の空間、未知の領域に踏み出し、新しい関係性をつくり出す。そういう挑戦者としての、あるいは探索者としてのアーティストというのはいよいよこれから必要になるなと。第一部はそんなことを考えさせる大変面白い展開でした。第二部は、アーティスト・イン・レジデンス(AIR)をマネジメントしてきた人たちからの視点でネットワークの活用を考えますが、ネットワークも世界的なものもあればローカルなものもあり、多様でダイナミックな議論が展開されるんだろうと思います。それでは、ソン・リさん、お願いします。


ソン・リA4 Art Museumの館長のソン・リと申します。A4 Art Museumは5年間日本と交流があり、今年は京都芸術センターと提携を始めるということですごく楽しみにしています。A4 Art Museumは2008年3月に設立された中国では珍しい民間出資の非営利組織です。2016年に成都のLUXELAKES自然保護エリアに移転しました。


A4 Art Museum 外観


当館は中国における現代芸術に関する活動を積極的に行っています。国際的な文化芸術交流を推進する一方、芸術による地域活性化の方法を模索しており、国際現代芸術企画展、作品制作プログラム、アーティスト・イン・レジデンス、若手アーティストチャレンジなどを企画しています。また、常設展や研究プロジェクトを設置するほか、シンポジウム、文化サロン、こども向けワークショップなども実施しています。アーティスト・イン・レジデンスプログラムは、日本、韓国、アメリカ、ドイツなど様々な国のアーティストが成都に集まり、成都という都市を自分の目で確かめ、コミュニケーションを通して自分の活動に新しいアイディアを生みだすためのリサーチや作品制作を行います。滞在期間中の制作・展示を通して、美術館と地域の文化的発展を推し進めたいと思っています。成都は四川省の中心都市で人口2,000万人の大都市です。パンダの街として、また、三国志の蜀としても有名で3000年の歴史があります。成都にやってきたアーティストたちには、制作活動だけではなく成都の各地を訪れてもらい、自分の創作に繋げてほしいと思っています。レジデンスプログラムでは、施設の無償提供だけではなく、スタッフやボランティアなどのアシスタントを積極的に提供します。具体的な制作の方法や、材料の調達に関してもしっかりとサポートしていきます。AIRを上手く進める為に、事前にプロジェクトの構成、企画をしっかりと話し合い、AIRのフォーマットを上手く活用していけるように取り組みたいと思っています。


具体的に成都に滞在したアーティストの制作活動を紹介すると、黄金町バザールとの連携で滞在したアーティスト、さとうりささんは2ヶ月滞在して、成都が水が豊かな街であることを知り、水をテーマに制作を行いました。作品はりささんの故郷横浜と成都の水をイメージしたものになりました。

「タスク」というワークショッププロジェクトをしたのはアメリカからのアーティストのオリバー・へリングです。展覧会だけではなくて、実際に人と交流するイベントを多数実施して、大変ユニークなプロジェクトになりました。成都市民は芸術に対してすごく熱心なので、300人以上の参加者がやって来て、展覧会はすごく盛り上がり、多くのフィードバックがありました。


さとうりささんの活動の様子


佐々木:ありがとうございました。私は3年前に成都に行きましたが、成都は大変大きな街で、どんどん拡張している訳ですけれども、芸術にも大変力が入っているということがよく分かったと思います。それでは、先ほどモデレーターを務めて頂いた日沼禎子さん、お願いします。


日沼:私は、1990年代からAIRの仕事に様々な形で関わっております。行政を中心に、今は民間のプロジェクトもスタートさせています。まず、なぜAIRが各地で注目されているのかということですが、グローバル化が進む中で、色んな市町村が、自分たちのコミュニティの中で、それぞれのあり方や価値を問い直している時期なのではないかと思います。

具体的な課題としては、人口減少による空き家が増加していたり、文化施設が老朽化しているといった点です。そういったところをアーティストのエンパワーで、何ができて何ができないのか。また、昨今の日本の中でのトピックの一つだと思いますけども、全国で芸術祭が沢山行われています。そこでの連携、その土地で行われている芸術祭の特性を出していくためのアーティストの力も求められていると思います。気をつけなければないこととして、アーティストの目的とAIRの事業者や主催者と目的が一致しているかどうか。運営者の立場だと、自分たちのコミュニティにもたらす利益や効果を考えてしまいがちなんですが、AIRはアーティストの場であるということを絶対に忘れてはならなくて、どういう目的をお互い持って、何をチャレンジしていくのかを考えることが重要だと思っています。これまでのAIRは、時間と場所を提供しながら、新しいビジョン、新しい価値とか新しい制作を共有することを考えてきました。2000年代に入って色んな経済が動いてくる中で、リソースということも注目されていると思います。その時間・場所ということだけじゃなくて、その土地にある文化的背景ですね。それらを掛け合わせて場所を作っていけるのか。それが新しいリノベーション、空き家への対策だとか、どういう風に価値をつくり変えていくか、あるいは地域との協働、また教育ということにどういう風に関与していけるかということも注目されていると思います。


続いて、AIRの事例として二つお話したいと思います。2001年に開館した国際芸術センター青森に準備室のスタッフとして99年から関わって、12年間キュレーターをしていました。元々青森市の市政100周年記念施設で、美術館ではなく未来型の文化施設としで、AIRを取り入れたアートセンターとして開館しました。2010年からは、青森公立大学経営経済学部の付属施設として運営を続けています。青森の四季折々の自然の豊かな場所で、アーティストのクリエーション、作品展示、フィールドワーク、コミュニティとのワークショップを含め、インターナショナルなアーティストたちがここで作品を制作しています。ネットワークということを考えると、ここで出会ったアーティスト同士が、次のプロジェクトを共同で行うということも多数ありました。ラトビアのアイガルス・ビクシェというアーティストとパラモデルの林泰彦さんは共にラトビア・ビナの欧州文化首都の時に街の中に温泉をつくるというプロジェクトをしました。これも、レジデンスで出会ったアーティスト同士の出会いの場所、次のクリエーションのサポートになったのではないかと思います。それから、教育という意味では、地域の子供たちへの創作体験など、アーティストによる指導の場所としても活用されています。


そして、私が2013年から新たに始めたのが陸前高田AIRプログラムです。これは、パブリックの仕事ではありますけども、組織は民間の会社経営で「なつかしい未来創造株式会社」という、復興株式会社と呼ばれる、特例として10年間の活動の中で地域の新しい資源をつくっていくというミッションの元、陸前高田市の中小企業育英会のメンバーによって立ち上げた会社です。地域の復興まちづくりを目的に、アーティストの力で新しい資源を生み出していこうとしています。


陸前高田AIR 2017より


AIRネットワークについて、今国内にあるAIRネットワークで注目したいものを紹介します。「マイクロレジデンスネットワーク」という、東京の遊工房アートスペースが提唱した活動です。アーティストラン、インディペンデント、柔軟性、グラスルーツ、人間関係を大切にする、そういった要素をもつ小規模な民営のAIRのネットワーキングを行っており、現在そのポータルサイトを運営しながらプロジェクトに展開していくことを模索しています。「AIRネットワーク・ジャパン」は日本のAIRネットワークで、研究者やアーティストたちがface to faceで情報交換する研究会などを行っています。このネットワークでは、経験者の実績をアーカイブして、AIRに行きたいアーティストの情報提供、色んな場所で関わるAIR運営者たちが直接話し合いを持って、現在の課題について話し合いをする場を設けています。


マイクロレジデンス ネットワークのウェブサイト


最後に、ネットワークを中心にしたプロジェクトの可能性について話したいと思います。「ホームベースプロジェクト」は、拠点を持たず、各都市にパートナーを探してアーティストのネットワークによって10人~12人のアーティストが1ヶ月間共同生活をしながら、その街が持っている社会課題に対して取り組み、地域にその成果を開いていくというシステムですが、ニューヨークからスタートして、ベルリン、エルサレム、さいたま市で実施しました。自分たちの恒常的な場所を持たずに、空きビルとか空き家などを移動しながら各地で協力しながらプロジェクトを展開していくアーティストイニシアティブのチームです。AIR運営というと物理的な形式に注力することが多いですが、プロジェクトの目的さえあれば、もしかしたらスペースは問題ではないのではないか、これはアーティストのチャレンジでもありますし、それを受け入れる運営者のチャレンジにもなるのではないかと思っています。


「Young for AIR」は、美大とマイクロレジデンスが連携するプログラムです。滞在アーティストが大学の授業に参加したり、そのレジデンスの現場に学生がインターンやAIRのコーディネーターの実践の場として勉強するというものです。普段なかなか海外に行くことのできない美術大学の学生と海外の美大が連携し、その事務局をマイクロレジデンスが担って、アーティストや学生を派遣するという事業を展開しています。全国の大学が関わりながら、3年~4年続けているところです。


やはり問題提起としては、社会にとってのAIRの意義というものをもっと顕在化させていくことが重要ではないかと考えています。それから、AIRは一つの生態系ではないかと思っています。多様な地域の多様な資源、文化的背景だけではなく、社会を支える人を動かしていくエンジンになる。先ほど継続の為の資金という話がありましたけれども、そういったものをもちよりながらどのように発展させていくことができるか。そのためにはネットワークによってそれぞれ問題を解決し、提案しながら、新しい展開やアートの生態系をつくっていくことが大事なのではないかと思っています。


佐々木:ありがとうございました。大変おもしろい未来に向けた話が出ました。続いて横堀ふみさん、宜しくお願いします。


横堀ダンスボックスの横堀です。ダンスボックスのAIRは、劇場を拠点とした舞台芸術に特化しているということ、新長田を拠点としているということが大きな特徴です。新長田は阪神淡路大震災で大きな打撃を受けた地域で、劇場のある地区も震災の時に焼け野原になり、その後に建てられたビルの中に劇場をつくり活動を展開しています。新長田には、関西では2番目に大きな在日コリアンのコミュニティ、ボートピープルからの流れを引き継いだベトナムのコミュニティ、沖縄や奄美の方のコミュニティがあったり、まさに様々なルーツを持つ方々が働き、生活をしています。


キム・ジュドク《ダークネス・プンバ》photo by junpei iwamoto


現在、韓国の振付家キム・ジュドクさんを招聘していて、リサーチとプロセスを重視しながら作品制作をしています。『ダークネス・プンバ』というキム・ジェドクさんの代表作ですでに100回以上再演されている名作があるのですが、それをカンパニーのダンサーではなくて、ダンスボックスが実施している「国内ダンス留学@神戸」(将来プロのダンサー・振付家として活躍していきたい人が8ヶ月間に亘ってダンスに徹底的に取り組むプログラム)の参加者がダンサーとして出演します。そしてミュージシャンとして在日コリアンのご夫婦にも出演して頂きます。ダンスボックスのAIRで大事にしていることは、必ずなんらかの形で、国内のアーティストや地元の方と一緒に共同制作をするということです。それによって、また新たなネットワークが広がっていくからです。


企画の趣旨をお話しして在日コリアンの方が運営するカラオケ屋さんのVIPルームを安価でお借りしたり、地域の公民館などを使いながら、地域の方に協力して頂きながらレジデンスプログラムを展開しています。劇場や公民館だけではなくて、また在日外国人定住支援センターや一般社団法人コリア神戸教育文化センターなど、主に在日コリアンの方が形成されているネットワークに共同して頂きながらプログラムを展開してきました。


今までは地域のリソースの上に作品をつくるということと、アーティスティックな面を重視した作品をつくるということが乖離するというか、両立することが難しかったんですが、今回このプログラムを始めて6年目にしてようやく、何かそれを分かつのではなくて、両方が叶うかたちでプログラムが展開できているのではないかという手ごたえがあります。

第一部のシンポジウムで出てきた、アートワールドに閉じない為の装置ということに納得しながら拝聴していたんですが、新長田という場所でやるからには、その多様さということを多様なまま混在させることのできる装置でありたいと考えています。


AIRのネットワークに関して申し上げますと、AIRは継続していくからこそ意義があり、そうでないとネットワークがつくれないと思います。場所を含めて、地元の方と色んな協働をしながら関係をつくっていくのも、1年ではやはり無理で、時間をかけてこそ少しずつ形成してきたということがあります。また、我々は小さな劇場を拠点にしていて、年に1本のレジデンスプログラムしかできないので、本当に一緒に仕事をしたいアーティストを厳選します。手広くできないという中で、本当に信頼できる人を、世界各地、主にアジアの中でどれだけつくっていくことができるのかということがすごく大切になります。どんなにネットワークがあってもそこに顔が見えないというか、信頼できないものであればやっぱり使いにくいんじゃないかと思います。プロジェクトベースで出会っていって信頼関係を築きながらまた数珠繋ぎのように出会っていって、というようなかなりアナログな形でのネットワークのつくり方をしているんですが、結局それが今すごく私たちの活動に大きな力を与えてくれていると思っています。

あとは、アーティストだけではなくキュレーターであったり、ドラマトゥルク、批評家、また舞台芸術には欠かせない照明や音響のデザイナーやスタッフの方のネットワークをきちんとつくっていきたいと思っています。と言いますのもやっぱり舞台をつくっていく上で、アーティストだけではなかなか次に展開していかないところもあるからです。そういった時に、スタッフ、専門家、キュレーターのネットワークがあることによってさらにプログラムを展開していくことができるということがあると思います。


佐々木:ありがとうございました。山本麻友美さん、お願いします。


山本京都芸術センターの山本です。AIRって何だろうとよく考えるのですが、先ほど日沼さんがおっしゃっていたように、すごく多様化していて、その地域であるとかオーガナイザーが芸術をどのようにとらえるかということが、あるいはその芸術にどういうものを期待するのかという解釈が、そのプログラムに独自性となって現れているとのはないかと思っています。京都芸術センターのレジデンスプログラムは、大きく分けて3つタイプがあり、1つは公募。これは2000年に芸術センターがオープンした時からしていて、応募の数が多くなってきて私たちの事務処理が追いつかないので、ビジュアルアーツとパフォーミングアーツと隔年で募集しています。

もう一つは他の施設と連携をするプログラムを立ち上げています。ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川ヴィラ九条山、それから京都市立芸術大学ナショナルパフォーマンスネットワーク、最近ではResArtisの紹介でビデオブラジルというブラジルのフェスティバルと連携をした事業を進めています。

最近特に力をいれているのが、エクスチェンジのプログラムです。招聘するだけではなくて私たちからもアーティストを派遣することを積極的にしています。ソウル、また今日ソンさんにも来て頂きましたけれども成都市と今度、エクスチェンジを始めることをとても楽しみにしています。


アーティスト・イン・レジデンス 京都芸術センター×Resartis/videobrasil マヤ・ワタナベさんの制作の様子


芸術センターの特色としては、レジデンスプログラム以外にも、それに近しいものとして、トラディショナルシアタートレーニングという、日本の伝統芸能である能と狂言と日本舞踊を学ぶ短期集中型のプログラムで、日本人と海外の人とが一緒にトレーニングをして、発表をすることをずっと続けています。また、フェルトシュテルケ・インターナショナルという学生と若い芸術家を対象にした事業では、3都市、2014年度はドイツとフランスと日本のそれぞれで10人ずつ芸術系の大学から選ばれた学生30人が各都市に一週間ずつ滞在しました。言葉もバックグラウンドも違う人が30人集まって、コミュニケーションをとりながらクリエーションをして最終日に発表をしましした。今年、京都は東アジア文化都市に選ばれておりまして、このフェルトシュテルケの東アジア版を展開したいと考えています。東アジア文化都市については、中国、韓国のアーティストの方にも参加していただいて、二条城と芸術センターで大規模な展覧会を予定しています。


ネットワークについては、KYOTO AIR ALLIANCEというネットワークを京都芸術センターで始めて3年程経ちます。京都から広げて関西でレジデンスに関係する施設の皆さんにお声をかけさせていただいて冊子をつくって紹介しています。今後は全国規模に広げていきたいというのが、私たちの目標で、もっとたくさんこのアライアンスに参加してくださるところが増えてきて頂けるといいなと思っています。

アーティストにとってはAIRのネットワークはすごく必要だろうと思うのですが、オーガナイズをする側、マネジメントをする私たちにとってネットワークがどれぐらい必要なのかについては実はずっと懐疑的でした。自分たちのネットワークを広げることにはすごく熱心に今まで頑張って取り組んできたけれど、そのオーガナイザー同士がどう繋がってネットワークをつくるのか、あまりいい方向性が思い浮かばないなと思っていたんですけれども、ここ何年かこういうシンポジウムをして問題意識を共有できたりとか、色んな情報を頂けたりとか、ということがあり、やっぱりあったほうがいいのかなというのが最近の私の考えです。


もし実際にネットワークを活用していくのであれば、京都芸術センターとしてはこのアライアンスを少し拡大して、既にあるネットワーク同士を繋げるようなことをしていきたいと思っています。アライアンスは一定の期間を区切ってこの時にやっているレジデンスのプログラムを紹介するという様なことをしているので、そういうプラットフォームを提供するようなことができるかもしれないと思います。既にもうそれぞれ、日沼さんがやってらっしゃるようにネットワークを進めていると思いますが、アーティストにはアーティスト向けのネットワークがあって、そこで情報が提供されているという様な状況です。先ほど、三原さんのお話にあった大変珍しいタイプのAIRなどは、私たちには調べる時間がないのですが、本当はこういった情報をもっと知りたいと感じている人がいるはずです。それをまとめて見られる様なものをつくっていけたらと思います。あとはAIRを新しく始めようとしている人にとって、どうやったらいいのかとか、何が困るのかとか、という情報の共有がうまくできていないことがあるので、そういうところを手助けしたいと思っています。


もう1つは、1つのプログラムを複数の組織や団体で行うということをしてみたいと考えています。レジデンスプログラムをするときに、募集、審査、招聘の手続きなど、たくさん業務として発生します。それを私たち芸術センターだけで全部を担うことは難しくなってきたという風に思い始めています。というのは、「京都」だからということもあるのですが、エクスチェンジをしたいとか、新しいプログラムを始めませんか、という提案をたくさん頂くのですが、それに応えたいと思った時に私たちだけではもう対応しきれないという現実があります。でも京都にはたくさんAIRがあるので、そういう他のところと少しでも協力して実施できないかという風に考えています。


シンポジウムの様子


佐々木: これからのAIRのあり方、あるいはネットワークの「質」の問題などについて、みなさんご意見いかがですか。


横堀:先程、顔が見える、信頼できるネットワークのことを言ったんですけども、フラットに情報共有できる場というのがやっぱりすごく大事だと思います。ネットワークに様々な層があるのではと思っていて、ローカルとグローバルの新しい繋ぎ方ということをそれぞれの地域でどんな試みがされているのかということを勉強したいと思っています。


日沼:ネットワーキングに関しては本当に十数年かけて思考錯誤してきて、恐らくこういう風にフラットに話せるようになったのはここ数年のことだと思います。特に国内のことを言うと、90年代くらいから自治体を中心に地域の再生や街づくりを視野に入れたAIRが台頭してきて、その地域のみに特化した展開が多く、ネットワークが作りづらかったんですね。現在、アーティストイニシアチブや、自分の家のカウチを貸すくらいの多様な活動が出てきた時に、そういった活動にもっと支援をしていく必要があると思っています。それが結果として一つの行政的な考えでもありますし、どこがそれを担うのかっていうのはずっと議論してきたことなんですけども、ひとつは京都でここ数年こういった場をつくってくださってたくさん発言ができるようになってきたのは本当に大きな力です。どこか一つのところがイニシアチブを取るべきとは言わないですが、中間支援の仕組みに対して資金的サポートをして頂ければ、国際的にはもっともっとネットワーキングは活発になると思います。

もうひとつはアーティスト個人が自由に動ける仕組みは日本の中では本当に少なくて、個人の持っている微細かつ豊かな情報を交換していくためには、やはりアーティスト一人ひとりのモビリティがとても大切です。その個人のアーティストに支援する仕組みもネットワーキングや中間支援の活動として構築していければいいのではないかと思っています。


佐々木:いくつか課題の提案をいただいてありがとうございました。ソンさんから何かコメントがあればお願いします。


ソン:アーティスト・イン・レジデンスのプログラムは、博物館とか美術館などの施設ではなく実際の生活の中で芸術活動を行い、共同制作をして芸術家と市民とのコミュニケーションを取っていくことが大事だと思っています。このコミュニケーションを通して国内外のアーティストと市民との輪をつくり、継続的にこのアーティスト・イン・レジデンスのプログラムを続けて行きたいと思います。


佐々木:どうもありがとうございました。日本全体では、21世紀に差し掛かる頃から現代アートが出てきたりそれから様々なアーティスト・イン・レジデンスが出てきて、これらを全体としてネットワーク化していくというプラットフォームをどのように考えるかという段階にきたと思います。

国をはじめとして行政の大きな動きもありますが、当然そこには微細な情報、マイクロなものがとても大事かと思います。アーティスト個々人の非常に多様な個人的なネットワークもきちんとサポートしていく。そういった形の設計が必要なんだろうと思います。京都への文化庁の移転を控えて、日本の文化首都としてどこまでどのようにそういった重責を担うことができるのか、これはまた別の機会にお集まりの皆さん方を含めて議論を重ねていきたいと思っています。今日はどうもありがとうございました。

Plofile

日沼 禎子(ひぬま ていこ)

女子美術大学准教授、AIRネットワーク準備会事務局長。1999年から国際芸術センター青森設立準備室、2011年まで同学芸員を務め、アーティスト・イン・レジデンスを中心としたアーティスト支援、プロジェクト、展覧会を多数企画、運営する。さいたまトリエンナーレ2016ではプロジェクトディレクターを務めた。2013年より陸前高田AIRプログラムディレクター。

孙 莉〈Sunny Sun〉(ソン・リ)

キュレーター、LUXELAKES·A4 Art Museum(旧A4 Contemporary Arts Center)アートディレクター。2007年より現代美術の展覧会や関連する教育普及事業等を企画する。2008年にA4 Contemporary Arts Centerを設立。中国でも数少ない非営利の芸術施設として、芸術理論、アートプロジェクト、現代美術教育に力を入れる。これまでに若手アーティストを中心として30以上の展覧会を企画、若手アーティストの創作をサポートしている。京都芸術センターとLUXELAKES·A4 Art Museumは本年度より連携し、チェンジプログラムを実施する。

横堀 ふみ(よこぼり ふみ)

NPO法人DANCE BOXプログラムディレクター。神戸・新長田在住。1999年よりDANCE BOXに関わる。劇場Art Theater dB神戸を拠点に、滞在制作を経て上演する流れを確立し、ダンスを中心としたプログラム展開を行なう。同時に、アジアの様々な地域をルーツにもつ多文化が混在する新長田にて、独自のアジアのプログラム展開を志向する。

山本 麻友美(やまもと まゆみ)

京都芸術センター チーフプログラムディレクター。主に京都芸術センター事業の統括と「東アジア文化都市2017京都」コア期間事業のキュレーションを担当。専門は現代美術史、メディアアート論。2000年の開館時からアート・コーディネーターとして伝統芸能やアーティスト・イン・レジデンス等の事業を担当。京都芸術センターとして多様な新しい表現を積極的に支援するプログラムを実施している。

佐々木 雅幸(ささき まさゆき)

文化庁文化芸術創造都市振興室長、同志社大学経済学部特別客員教授。京都大学大学院経済学研究博士課程修了、経済学博士(京都大学)。金沢大学経済学部教授、大阪市立大学大学院創造都市研究科教授などを経て、2014年より現職。創造都市ネットワーク日本の顧問を務めるなど、創造都市政策を牽引する。

vol.56 対談
vol.55 対談
vol.54 対談
vol.53 対談
vol.52 対談
vol.51 対談
vol.50 インタビュー
vol.49 対談
vol.48 インタビュー
vol.47 インタビュー
vol.46 インタビュー
vol.45 対談
vol.44 対談
vol.43 対談
vol.42 対談
vol.41 対談
vol.40 インタビュー
vol.39 インタビュー
vol.38 インタビュー
vol.37 対談
vol.36 
vol.35 対談
vol.31 インタビュー
vol.30 インタビュー
vol.28 
vol.27 
vol.26 インタビュー
vol.24 対談
vol.23 対談
vol.22 インタビュー
vol.21 対談
vol.20 インタビュー
vol.19 インタビュー
vol.18 インタビュー
vol.17 対談
vol.16 対談
vol.15 インタビュー
vol.14 インタビュー
vol.13 インタビュー
  • ダンスと映像 ―積み重ねた対話の、現在地点
  • Weightless Days
  • 2013.06.15 UP
vol.12 インタビュー
vol.11 インタビュー
vol.10 対談
vol.9 インタビュー
  • 煎じ薬でも治らぬ、板の間と暮らしの公転
  • 鏡世界社
  • 2013.04.16 UP
vol.8 インタビュー
vol.7 対談
vol.6 インタビュー
vol.5 対談
vol.4 インタビュー
vol.3 インタビュー
vol.2 インタビュー
vol.1 インタビュー

> KAB Dialogue 記事一覧へ

Page Top