―ヴァイオリンを始めたきっかけは何ですか?
ニューヨークで5歳の時にサマーセミナーに参加した際、色々な楽器に触れる機会があり、その中でもヴァイオリンの魅力の虜となりました。当時ヴァイオリンをおもちゃのように感じたのかとても気に入り、姉はピアノをやっていた影響もあり続けてきました。
―泉原さんは留学経験が豊富ですが、ベルギーでイーゴリ・オイストラフ氏に師事されたときは、どのようなことを学ばれましたか?
イーゴリ・オイストラフ先生からは音楽をどう音で表現するかということや、一つ一つの音に対する追求の深さを学びました。先生の指導はとても厳しかったのですが、ロマン派の音楽を中心とした非常に情熱的なレッスンに、毎回刺激を受けました。また、レッスンの際間近で彼の素晴らしいサウンドを聴くことが出来たのも良い経験になりました。
―オーケストラの魅力を教えてください。
たくさんありますが、約80人の演奏が一つになったときの迫力に加え、豊富な音色もオーケストラの魅力ではないでしょうか。楽器の種類も豊富ですし、例えば大きいものですとマーラーのシンフォニーなど、演奏者200人以上という大迫力と多様な音を楽しむことが出来ます。また、オーケストラというのは、音楽に対して様々な考え方を持った音楽家の集まりであり、いいものを作っていきたいという気持ちは皆共通しています。皆がピラミッドの高みを目指していくように、皆が音楽の理想の頂点に向かって同じ方向を向いている、演奏会でそう感じた瞬間の喜びは素晴らしいものです。
―今回、練習風景を見学させていただきましたが、指揮者と話し合う場面が多くみられました。コンサートマスターの役割とはどのようなものでしょうか。
コンサートマスターというのは、よく言われるのは、団員と指揮者との橋渡し役です。指揮者は音楽全体の指示をつけるのですが、音は出しません。それに対し、表情や空気感という部分を、音を出して先導していかなければいけないのがコンサートマスターの役割です。あとは、演奏中に何かハプニングが起きないとも限らないので、その様な時に演奏をどう持ちこたえるかは、コンサートマスターの手腕でもあります。例えば、カウントがずれてしまった時に、身ぶり手ぶりまでとはいきませんが、呼吸や目線など演奏の仕方でとにかく団員を引っ張っていかなければいけない責任のある立場です。
コンサートマスターとして、楽器それぞれの入る細かな位置や切るタイミングも把握しておかなければいけないので、他の楽器のスコアもすべて頭に入れています。
―2009年に京都市交響楽団のコンサートマスターに就任され、どのように役割を果たしてこられたのでしょうか。
所属したのは京都市交響楽団が初めてなので、一年目はとにかく手探りで様々なことをやってきて、演奏会までに指揮者との話し合いがどのように行われるのかがすごく重要だということを学びました。
指揮者と団員の間に立つ上で、決定したことを団員にはっきり指示する方法をとるよりは、普段のコミュニケーションの中で自分の意見を団員に伝え、団員同志で気付いたことから、自然と同じ方向に全員が向いていくようなコミュニケーションを心掛けています。
演奏中は、客観的に全体を見る部分と、熱く弾かなければならない部分がありますので、どこか冷静でいることを意識します。他の楽器の演奏者たちの様子を見て、遠くで鳴っている音も聴くようにしています。
また、オーケストラの中では私がお客様に一番近い場所で弾きますので、客席の方の反応が直に伝わってきます。客席から跳ね返ってくる反応はたとえそれが無音でも、近くに感じられたり、我々のパワーになったりするものなのです。
―今後の目標をお聞かせください。
月並みな言い方になりますが、京響コンマスとしてより良い音楽作りをし、京響の演奏会に来て本当に良かった、とより多くの人に感じてもらえるような演奏会を続けていきたいです。これはシンプルですがとても重要な事だと思っています。また演奏家として、オーケストラだけでなく、ソロや室内楽といった活動でも音楽の素晴らしさを皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
■ 取材日:2012年6月25日(月)
■ 取材場所:京都市交響楽団練習場にて