2025.10.19

ロスホコス「Scotland Glasgow 遠征プロジェクト The Hanabi: Firework Flames Festival 」帰国報告会

「ロスホコス」は、京都芸術センターのコミュニティダンス企画「Dance 4 All」(2009~2015年)をきっかけに2011年に結成した、50~70代の男性によるダンスチームです。
各地で開催されるダンスフェスティバルへの出演などを重ね、2025年6月、クラウドファンディングによる支援を受けスコットランド遠征を実現しました。彼らにとって踊ること、表現すること、発表すること、とは…?
彼らの体験を辿りながら、人生というスケールでアートとの関係性や向き合い方について、そして「生きがい」について、考えてみましょう。



“おやじダンス”が創る/つなぐ/変える社会と世界~スコットランド遠征から JAPAN OYAJI DANCE NETWORK へ~


ロスホコス(乾 光男)


はじめに
2011年から動き始めたおやじダンスは活動展開の一環として、かねてより海外遠征も視野に入れてました。
ロスホコスと云うダンスカンパニーの特徴は日本国内のみならず文化を跨いでも受け入れられるとの希望を胸に!

まさに今回は、その抱いていた望みが現実になったのです。
Glasgowを拠点に活動するパフォーマンス集団「Tricky Hat Productions」がそれを叶えてくれました。
異文化交流の一環として2018年から度々来日していましたが2023年も来日し、活動を終えて、帰国間際の慌ただしいタイミングでしたが、JCDN(ジャパン・コンテンポラリー・ダンス・ネットワーク)からの紹介で、ほんの30分程度顔合わせをすることが出来ました。後日、改めてロスホコスの活動資料等を見ていただいて好評を得たことが今回のプロジェクトへと発展しました。
現地5日間に渡るツアーに至る、ロスホコスとしてのプロジェクトについてお話したいと思います。

渡航メンバーの選定
2024年の初夏にTricky Hat Productions から招聘の正式なオファーがあり、まずは人選から始めました。実際のところ海外遠征となれば仕事を休む必要があり、その点において参加出来ないメンバーがいて、人選は難航しましたが何とか5名が揃いました。

経費の工面
次の問題は渡航費をどうするのか? 招聘ではあるものの経費全額を負担していただける訳でもなくて渡航費に関しては自費となります。遠く離れたスコットランドへの費用として百数十万円をどうするのか?自腹…? 悩みどころでした。
幸い、財源を生む手段としての助成金申請とクラウドファンディングを立上げました。残念ながら助成金は不採択となり、その時点からクラウドファンディングに力を注ぎ、何とか目標を達成。138名の貴重なご支援を頂戴して渡航費問題は解決しました。

作品創り
2025年1月にはロスホコス単独公演を既に予定しており、そちらの活動が主体となりましたが、2024年10月にはTricky Hat Productions が来日。3日間に渡り一緒にクリエイションを行いました。単独公演を終えてからは遠征向けのクリエイションを本格的に取り組みました。芸術性と娯楽性を好き勝手に行き来するのがロスホコスのコンセプト。作品内容としては、中年おやじ達の生き様を魅せることに主眼を置き、これまで蓄積したロスホコス作品をベースに構成しました。クリエイションの終盤には振付家からのアドバイスも受けて、自信溢れる作品が完成しました。


In Glasgow
憧れの海外遠征!これから始まるプログラムに何となくソワソワした気分で、メンバーは宿泊先ホテルThe Social Hubに現地集合。飛行機がGlasgow 空港に降り立つ間際に改めてふつふつと湧き上がる熱い感情「ダンスをするために彼の地に立つ!それが現実に始まろうとしている!」

遠征メンバー(スコットランドにて)

現地4泊の行程は、ほぼ公演に向けての準備等に費やされていて観光気分はまったくなかったが、早朝のラジオ体操をする為にGlasgow Green 公園への道すがら、街並みを味わう。
Glasgow の外気は穏やかに身体を包んでくれて、初遠征の緊張感がほぐされる。
本番まではロスホコス作品のリハーサル、Tricky Hat 現地メンバーとのコラボレーション作品創りと多忙を極めてましたが、夜には街へ繰り出してScotland 料理を味わうことで気分転換も。
いよいよ当日、朝から慌ただしくゲネプロ等が進行して、午後からThe Hanabi: Firework Flames Festival スタート。現地メンバーとのコラボレーション作品を終えて、ロスホコス作品『生きがい/IKIGAI=Life+ing』をやり切りました。全身全霊をかけて!「これが日本のおやじだ!情熱の塊ロスホコスなんだぞ!」

グラスゴーの劇場にて

そして…、お客様からはWonderful、Brilliant、Excellentと絶賛の声が会場内を飛び交い、僕たちの身体包み込む、感動的な瞬間でした。
「スコットランドの高齢男性たちがライブパフォーマンスに積極的に参加したくなるような刺激を与えてほしい」とのTricky Hat の熱意に応えることが出来た、と確信した瞬間でした。


報告会
今回の遠征の成果をもっと広く知って欲しいとの思いから、東京・京都の2会場で報告会を開催しました。どちらも沢山のお客様にご参加いただき、記録映像を元に編集したドキュメンタリーの上映・ゲストスピーカーを交えてのトークセッションなど。お客様からも「プロジェクトの全容が分かり易くて楽しめた」他、たくさんの感想をいただきました。京都会場は芸術センターとの共催事業として、和室「明倫」での開催となりました。茶室と云う特別な空間は踊るおやじ達にも似合う・・・と勝手に思ったりもしてました。

報告会〔京都〕(京都芸術センター)


これからのロスホコス
今回の遠征を足掛かりとして、更にグローバルな展開を視野に活動してゆくつもりです。
勿論、足元の国内も蔑ろにはしてません。全国で活動している「楽しく踊る中高年おやじ達」がそれなりの数で存在しています。その「楽しく踊る中高年おやじ達」の相互交流を図り、存在を周知し、新たなおやじダンサーの発掘・育成することを目的としたネットワーク構築を考えてます。
名称はジャパン・オヤジ・ダンス・ネットワーク(JODN)。2027年頃を目途に設立予定です。同時に設立記念として「おやじダンスフェスティバル」も模索中です。

報告会〔京都〕(京都芸術センター)

「夢を追いかけ続ける限り、人生はまだまだ進化する!」中高年おやじには計り知れない力がある筈です。中高年世代の人生をさらに色鮮やかに彩るきっかけとしての「ダンス」の可能性をもっと知って欲しい!「年齢を重ねることの面白さ・年齢に関係なく自分を表現できる方法/場がある」という希望を示したいのです。
そんな思いを胸にこれからもロスホコスは弾けます!!!
国境も越えて“おやじダンス”ムーブメントを起こしたい!



あとがき
今回のプロジェクトには数多く人達とのご縁があって実現出来ました。
Tricky Hat Productions 、JCDN、クラウドファンディング138名のご支援者、遠征サポート関係者、京都芸術センター。他にも数えきれない方々に支えられてきました。
生きると云うことは、他者との繋がりが如何に大切で必要なことなんだと知る機会でもありました。
みなさん、本当にありがとうございました。

グラスゴーの劇場にて


ロスホコス
2011年、京都芸術センター主催・コミュニティダンスイベント「ダンス4オール」の〔オヤジチーム〕の有志メンバーによりコンテンポラリーダンス集団を結成、祇園祭の山鉾になぞらえて「ロス ホコ(鉾)ス」と命名。2012年9月に初の単独公演「オヤジの秘密クラブ」@グッケンハイム邸〔神戸〕(※北村成美、セレノグラフィカにコレオグラフィを依頼)、2014年1月「Dance Complex vol.9」@大阪芸術創造館では館長賞を受賞、2016年5月:「HOKURIKU DANCE FESTIVAL」@金沢21世紀美術館シアター21〔石川〕、2018年「ロスホコスの嵐電ジャック」(嵐山電鉄の車両を貸切運行中の電車内でパフォーマンスを実施)、2025年1月:単独公演「I need you」を開催 @UrBANGUILD〔京都〕他、全国に活動を広げている。




|スコットランドでの公演概要|
Hanabi:Firework Flames Festival
 日 時:2025年6月14日(土)
 会 場:Centre for Contemporary Arts(Scotland, Glasgow)
 ロスホコス参加メンバー:乾光男、草山太郎、楠喜一朗、西野至、西村和典
 サポートメンバー:岩本みのり



|報告会開催概要|
ロスホコス:スコットランド遠征報告会「“おやじダンス”が創る/つなぐ/変える社会と世界~スコットランド遠征から JAPAN OYAJI DANCE NETWORK へ~」[京都]
 日 時:2025年8月17日(日)13:00 – 15:30
 会 場:京都芸術センター〔4階〕和室「明倫」
 ゲスト:山本麻友美(京都芸術センター副館長)
 主 催:一般社団法人ロスホコス
 共 催:京都芸術センター
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