オランダ近代絵画の巨匠、“炎の画家”フインセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)は、よく知られている作風のように、本当に燃えさかる情熱的な人生を送ったのでしょうか?なかなか報われない努力に苦悩し、自己嫌悪に陥った日々を、彼の作品を見れば見るほどひしひしと伝わってきます。
アムステルダムにあるゴッホ美術館の研究チームは、7年にわたりゴッホの実像を追い求めてきました。その答えは意外にも、空白であったパリ時代の作品に隠されていました。今日のゴッホ研究は、弟テオとの書簡をもとに検証されています。しかし、33歳を迎えたばかりのゴッホがテオと同居していたパリ時代には、それらの書簡が存在しないため、ゴッホのパリでの生活をうかがい知ることが出来ませんでした。
今回の《ゴッホ展》では、ゴッホ美術館(アムステルダム)の改修工事のための約6ヶ月間の閉館に伴い、多数の日本未公開作品の展示が実現しました。 全53作品のうち36作品が日本初公開となり、また、ゴッホが描いた自画像のうち、8点が日本に揃うというのも初めてのことです。一見、『自画像10点の公開では?』と思った方も多くいらっしゃるかもしれません。しかし、1点は弟テオの肖像画で、もう1点はジョン・ピーター・ラッセルが描いたゴッホの肖像画です。これも今回の見どころの一つではないでしょうか。ラッセルが描いた精巧なゴッホの肖像から、本当の『ゴッホの顔』を知ることができます。 これらをはじめとした、ゴッホの謎を紐解きながら進んでいく展示方法をぜひお楽しみ下さい。ゴッホの挫折と苦渋からの再生を、孤独の中の強靭さを、そして日本との不思議な関わりを、あなた自身の眼で追想してください。 後に、光を求めて移住した南仏の地で、ゴッホにやがて訪れる悲劇の序章が、“空白のパリ”に、すでにあったのかもしれません。
記念講演会「本物?贋物?ファン・ゴッホ作品の真贋鑑定史」
日時:4月7日(日)14:00~15:30
ワークショップ「自画像を描く(子供向け)」
日時:5月5日(日・祝)