京都精華大学芸術学部の授業「表現研究3,4」「現代アートプロジェクト演習4」を通じて学生たちが自ら立案する企画展として、「Kaleidoscope(万華鏡):藤井俊治/柴田精一」を開催する。
絵画の前に立ったとき、絵の世界に引き込まれるような、心を捉えられて目が離せないような、あるいは焦点が曖昧になり画面を浮遊してしまうような経験をしたことはないだろうか。「平面作品」と言ってしまえば簡単だが、絵画の画面には、色彩、線、モチーフ、マチエール、コンテクストが幾重にも折り重なり、見る者の視線を捉える/彷徨わせる、包み込む/突き戻す、といった複雑で多様な力がある。本展ではその観点から藤井俊治と柴田精一を選出し、彼らの表現世界をKaleidoscopeになぞらえた。
藤井俊治は、ティアラや鏡といったモチーフを半透明に描いたり、ベールのような白い膜を組み合わせ、多層的な絵画を生み出す。アルミ箔などの素材や鏡のモチーフを用いることで、絵画と現実の境界が曖昧になり、見る者の意識を錯綜させる。柴田精一は、折り畳んだ正方形の色紙を気の赴くまま切り出し、重ねて、形や色彩のパターンを浮かび上がらせる「紋切重」の手法を用いる。無意識の領域で作られた型紙が時間を超えて重なることで、絶えず変化する心のイメージを表出させる。
2名の作家は、用いる技法は異なるが、同じ図柄を繰り返し反復させて構成する点や、重ねることで新鮮なレイヤー効果を生み出し、独自の精神性を導き出すという点で共通している。本展では、壁面から床面まで、刻々と変わりゆく陽の光と絡み合いながら絶えず変化する2人の作品を混在させて展示することで、新しいイメージ・感覚が次々と生まれる万華鏡的な空間を作り出す。作品どうしの共鳴、あふれ出す色彩、物質性と精神性の関係性が、見る者の意識を地上の現実と絵画世界との間で行き来させるだろう。
企画:チンシウ、松田柴馬、松尾風花、鍋倉悠希、中村琴梨、寺方優真
監修:吉岡恵美子(京都精華大学芸術学部教員)