【パフォーマンス・アート based on 文学】
京都を拠点に活動するニットキャップシアター。
その劇団名は、ムーンライダーズの楽曲「ニットキャップマン」に由来する。
代表のごまのはえ(劇作家・演出家・俳優)は、表現者としての根を文学に下ろしながら、「言葉」と「言葉以外」の二つを様々に組み合わせて、ソリッドにイマジネーションあふれる作品をつくってきた。
今作『strange』は2011年4月にごまのはえが失踪した友人を探す話。
緻密なチームワークが魅力的な劇団オリジナルメンバーに加え、コンテンポラリーダンサーの佐藤健大郎氏、マイムを中心に様々なパフォーマンスジャンルを横断する黒木夏海氏が参加。 劇団ではお馴染みとなった「カホン」、「シンギングボール」、「ムックリ」、「カリンバ」といった楽器や、仮面、白布などのマジカルグッズももちろん登場する。
上演/演奏、音楽/演劇、ダンサー/俳優、あらゆる要素が鋭く衝突しながらもはやその境界は消失し、素朴で豊かな太古のパフォーマンスが立ち現れる!
*Story
人を探すのは初めての体験だった。
あきらかに私は興奮していた。
こんな気持ちになったのははじめてだった。
「待つ」こと、それも「 出口もなく待つ」こと、
こんなことが一週間も続けば
気が持たなくなる。
探し始めて二日目にしてそう感じた。
そしてそれ以上探すのをやめた。
いや、探すことだけに時間を費やすのは
やめた。
買い物ついでに探したり、移動のついでに
探したりすることにした。
五月を過ぎてから目撃情報が
K市の繁華街であった。
そのコンビニを見張っていたところ、
20分も経たないうちにやってきた。
失踪はわずか一ヶ月で終わった。
余波について。
わずか二日間だけの
あまりに凡庸なエピソード。
とりあえず帰ろう、そう言いかけたとき、
友人は私に顔を近づけた。
「あの煙を見たか?」
煙?
「まずは煙の話からはじめよう」
・・・・・・・・・ごまのはえ 構想ノートより