大正期から昭和期に移り、日本画の表現は大きく変わりました。大正期では抒情的な表現が前面に出た、濃厚な色彩やぼかし、陰影を用いた作品が多く見られましたが、昭和になると、簡潔な線、平明な構図、抑制された色彩の、格調高い画風が流行します。
同時に、これら端正な画風を用いた主題としてよく見られたのが、日本や中国の歴史や古典文学、あるいは古典美術を意識したものです。猪飼嘯谷や梥本一洋、菊池契月をはじめ、京都画家の多くが歴史主題の作品を制作し、また一方で石崎光瑶や上村松篁は古典美術の学習を反映した作品を発表しています。本特集では、昭和前期の日本画を紹介し、その創造の源泉となった「古典」へのまさざしに迫ります。
(画像)梥本一洋≪鵺≫1936年京都市美術館蔵