作品紹介
フランツ・アッカーマンは、ペインティング、ドローイング、写真、彫刻、サイトスペシフィックのウォールペインティングなどを使ってインスタレーションを手がけます。ヴィヴィッドな色彩と建築的な要素をもつ彼のイメージは、様々な物語、実在そして想像上の特定の場所が繋がり、侵食しあい、衝突し合うようなダイナミズムを作り上げます。ペインティングとは固定されたものではなく、常に自己定義をしながら新しい領域へと広がりゆくものであること。アッカーマンの制作はそのことを示唆しているようです。
旅はアッカーマンにとって重要なテーマであり、また制作の手段でもあります。1991年の香港での滞在以来、彼は世界中を旅し、制作を続けています。旅先のホテルや移動中に描かれる「メンタル・マップ」と彼が呼ぶ小さめのドローイングは、その場所の忠実な記録ではなく彼の視覚的経験を描いたもの。それをもとに断片化、抽象化された大きいサイズのペインティングが生まれます。2005年の小山登美夫ギャラリーでの個展の際には、3週間弱東京に滞在してインスタレーションを制作。翌年の森美術館での「東京—ベルリン/ベルリンー東京」展でもウォールペインティングの上にタブローを配置した作品を展示しました。都市の構成要素、移動の軌跡、イマジネーションと経験、そして都市と自身とのダイアローグを取り込みながら、彼の創作は終わりなき移動と同じ様に生成、変化し続けます。重層的なイメージが交差し、平衡感覚を揺さぶるような力強さをもつ作品は、自由、そして混乱に満ち、様々な要素が凝縮された都市そのものを体現しているかのようです。
展覧会について
日本での7年ぶりの個展となる本展では、新作のペインティング、ミクストメディアの作品を展示いたします。今回アッカーマンは一週間京都に滞在し、街を歩き、新作も制作します。写真におさめられたイメージ、街の色やその他の様々な要素、そして彼の経験が、サイトスペシフィックのウォールペインティングなどの新作、そして展示スペース自体の一部となります。この機会に是非ご高覧ください。