多くの陶芸作家は桃山や室町という時代が生んだ作品を最高の到達点として、その再現をめざしてきました。わたくし自身も過去の遺産に心動かされ、古陶磁を蒐集してきたといえます。その上で今、趣味としてモノづくりに向き合う自分は、果たして何を求めているのだろうか、そのようなことを考えるようになってからというもの、頭の中に巣くう過去のカタチをもとに、ただ漫然とモノづくりをしている自分に気づくことも度々でした。今の時代を生きる我が欲するカタチとは何か。趣味人として使い手のニーズにどこまで譲歩するのか。そのようなことを考えれば考えるほど手は停まり、時には作品を打壊しているのでした。これはまさにスランプそのもの。それでも何とかカタチとして生き残ったもの、それが今回展観する作品群に他なりません。まさに、躊躇し逡巡し続けた足跡として存在するモノたち。まことに拙い作品ではございますが、この機会にご高覧頂きたくご案内いたします。