ぼくたちは「哲学や哲学史を勉強したい人」を求めてはいません。「哲学する/したい」と思っている人たちとどこに向かうのかわからない終わりのない対話を始めたいと思っています。「考える」とはナビで目的地に向かうようなことではなく、むしろ言葉(ロゴス)の森の中で完全に方向感覚を見失ってしまうようなプロセスです。迷うことこそ、哲学的思考の力なのです。この講座を通して、一緒に迷子になってみませんか! 毎回一人が提言し、そこから対話が始まっていきます。
室井尚(むろい ひさし) x 吉岡洋(よしおか ひろし)
室井尚・吉岡洋による連続講座「哲学とアートのための12の対話」が、2023年4月より京都芸術センターにおいて予定され、3月12日にはそのプレイベントが銀閣寺道近くの爽庵カフェにおいて開催されました。それからわずか9日後の3月21日、室井尚さんは数年間闘病してきた癌のため、この世を去りました。
室井さんの身体は残念ながら失われましたが、彼の表情や身振、言葉や語り方はまだ鮮やかに生きており、その声は「せっかく楽しみにしてきたのに、自分が亡くなったくらいのことで中止するなよ!」と言っているように思えました。
連続講座をどうしよう?と私はスタッフと話し合いました。考えた末、連続講座は同じタイトル、同じプログラムで決行することにしました。室井さんが残したテキストや映像から、彼の臨在を前提しつつ、対話的なトークを行なってゆこうと思います。5月13日からスタートし、2024年3月までに12回行います。
これは追悼的なイベントではなく、内容はけっして思い出話ではありません。あくまで、これまで室井さんと二人で考えてきた各回のテーマにしたがって、哲学的な議論をすることが目標です。
連続講座なのでできるだけ通年で参加していただきたいのですが、仕事の都合や遠方から来られる方のことも考慮して、一回毎の参加も可能としました。(吉岡洋)
■第1回 イントロダクション:「考える」= 「迷子になる」
スマホがあれば私たちは知らない街でも迷わず、人に道を訊くこともない。それは言い換えれば、ナビ過剰の現代においては、私たちは「迷子になる」自由を奪われているということだ。そのことは現実の空間ばかりでなく、思考のあり方においても同じなのである。
※プログラムは年間通して計12回。第2日目以降の日時やテーマは、WEBサイト(
https://www.kac.or.jp/events/33484/)をご覧ください。
KACパートナーシップ・プログラム2023 採択企画