前近代中国には、「文」を拠りどころに官僚となって政治を支配し、知識人として文化を牽引した「文人」と呼ばれる人々がいた。彼らは、徹底して古典や書を学ぶことで、難関試験である科挙を突破して国家の舵取りに参加する一方、私生活ではその教養を生かし、生活の糧を得る手段としてではなく、「アマチュア」の立場で書画作品を制作し、そしてあくまで「アマチュア」であることに誇りを持っていた。
特に清朝の「文人」たちが遺した書作品には、歴代の能書を継承した正統派のもの、古文字の研究成果を反映した学究派のもの、独自の表現を追い求めた個性派のものなどがあり、絵画作品には、技巧や写実とは異なる独特の精神性が反映され、いずれからも俗人を超越した雰囲気を感じることができる。
本展では、館蔵資料から清朝文人の書画を選び出し、その魅力に迫る。