アナログに構成したコラージュを基にペインティングを制作。その過程で現われる新しい形を現在の瞬間と重ね、時間の脆さや儚さを表現する。
当たり前に存在する目の前のことが「かつての…」と呼ばれる日はそう遠くない。全てのものは時間の経過により遅かれ早かれ形を失い、いずれは未来の遺物となる。巨大な丸が回転しながら何もかもを飲み込んでいくシーンをイメージする度に意味を見出せなくなるも、時間という無形物の集積に対する愛おしさは年々膨らむばかりである。過去の出来事は記憶を介してズレたりブレたりしながら重なり、今を複雑に形作る。他者の記録の断片やストロークを頼りに具象と抽象間を行き来し、再構築の末現れる新しい形は、意識した途端、既に背後にいるこの瞬間そのものと重なってみえる。一方向に真っ直ぐ伸びる線の先で、形なき遺跡となろう儚く脆い時間層を、確かに存在した証として、ここに描き留めておきたい。