京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映像舞台芸術学科を卒業後、国内外の様々な演劇祭で作品を発表し続けてきた演出家・村川拓也による初の春秋座公演は、京都市内のスーパーで実際に起きた刺傷事件を題材に、私たちが過ごす日常のあり方を問い直す。現実への深い眼差しを手がかりに、同時代的な課題と密接に関わる作品を発表し続けてきた村川は、今回、自身が体験した「事件」を演劇作品として上演する。しかしそれは、事件を一つの物語として消費することを目指すのではなく、あたかも物語のようにして事件が消費されてしまう現在そのものを露呈させる試みである。劇場20周年公演の第一弾として上演される本作は、ルーティーンとして続けられてしまう日常と事件の関係を、消費社会の象徴であるスーパーマーケットを題材として浮き彫りにしながら、社会がすぐに忘れることを求めてくる、多くの出来事を私達に思い出させる。
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2018年11月、京都市のスーパーで刺傷事件がありました。この作品ではこの事件を扱おうと思っています。なぜならこのとき、私はこのスーパーの中にいたからです。私がいる5mほど先の目の前で事件は起こりました。いろんな方向から「刺された」という言葉が聞こえてきました。ドラマで見るような血の水たまりが、身体の下にできていました。これを見た瞬間にもう逃げなきゃと思い立ち、すぐにスーパーから出ました。スーパーから出る前になんどか周りを見渡していて、刺された人の姿と同じくらい、周りの人々の状況に驚きました。なぜかというと、人が人を刺した瞬間に、その近くにいなくて、もっと遠くにいて買物を続けていた人は、何が起きているのかを知らないまま、まだ買物を続けていたからです。(村川拓也)
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演出:村川拓也
出演:有間七海 北川航平 島田幹大 陌間彩花 早川聡 山田幸音
舞台監督:浜村修司
音響:佐藤武紀
照明:葭田野浩介(RYU)
映像:城間典子
制作:豊山佳美、長澤慶太(京都芸術大学 舞台芸術研究センター)
▽村川拓也
演出家、映像作家。映像、演劇、美術など複数の分野を横断しつつ、ドキュメンタリーやフィールドワークの手法を用いた作品を発表している。虚構と現実の境界に生まれる村川の作品は、表現の方法論を問い直すだけでなく、現実世界での生のリアリティとは何かを模索する。介護する/される関係を舞台上で再現する『ツァイトゲーバー』はHAU Hebbel am Ufer(ベルリン)をはじめ、国内外で上演を重ねている。近作に『ムーンライト』(ロームシアター京都「CIRCULATION KYOTO-劇場編」2018、フェスティバル/トーキョー20)。『Pamilya(パミリヤ)』(キビるフェス2020)など。京都芸術大学映像学科 非常勤講師。