ごあいさつ
学生と教員の関係から生まれる学びの足跡を、作品を通して紹介する「アートであしあと」の第3回は、本学芸術資料館の収蔵品より、1977年から近年までの日本画専攻卒業・修了作品を展示します。
日本画という語は,移入された西洋画と在来の日本絵画を意図的に区別するために,近代になって使用されるようになったものといいます。だから,それほど古い言葉ではありません。しかし、近世まで連綿と受け継がれた日本絵画の歴史を引き受ける概念として、時代の空気に呼吸しながら新しい意味を紡ぎ出しています。
本学における日本画教育は,明治13年の京都府画学校開校に始まります。当時この学校は「四宗画学校」と呼ばれていて、様々な流派の絵画が学べることを理念としました。近世以来の画系門流が寄り合い所帯をつくることから、その教育は始まったのです。当初は混乱もあったようですが、試行錯誤を繰り返し、ようやく特定の流派様式に偏ることなく、運筆と模写と写生を柱とする教程が整えられました。現在の本学の日本画専攻は、この教育を継承するものです。戦後、様々な美術運動の勃興するなか、運筆と模写の役割は次第に比率を小さくしていきましたが、対象と誠実に向き合う写生態度は、一貫して継承されています。それは、今回の展示でも感受していただけるものと思います。
展示作品を制作したのは、1970年以後に入学した学生です。この年、京都市立芸術大学では改革案が実施され、カリキュラムが大きく変更しました。明治以来さほど変わらなかった日本画教育にも新しい視点が加わることになったのです。新しい教育を受ける世代となった彼らは、教師の感性に刺激を受けつつ、より一層独自の道を模索するようになり、現在に至っています。
130年を越す本学の日本画教育の歴史は、多くの才能を育み、優れた作家を輩出してきました。輝かしい歴史の現在をごらんいただければ幸いです。皆様どうぞごゆっくりご鑑賞ください。