染め・織り・繍いといった染織の技術は、古くから衣類や生活雑貨に用いられ、人々の生活に根付き発展してきました。明治時代に入ると、染織によって絵画の図様を表した室内装飾品が盛んにつくられるようになり、海外に多数輸出され、皇室建築等に飾られました。このような染織品を「美術染織」といいます。美術染織はおもに髙島屋の飯田新七や千總の西村總左衛門といった京都の呉服商のプロデュースによって制作され、日本画家が盛んに下絵を手がけました。
このたびの展示では、刺繍や天鵞絨(ビロード)友禅の技法を用いた作品を中心に、優美で華やかな美術染織の魅力をご紹介いたします。ひと針ひと針モチーフを繍いあげる刺繍絵画は、一般的な絵画作品にはない絹糸の繊細なきらめきが見られます。また天鵞絨友禅は、明治時代に新たに開発された技法で、天鵞絨地特有の柔らかな質感や友禅染の見事な染め分けが持ち味です。驚くべき描写力が発揮された名品の数々をどうぞお楽しみください。
【本展覧会は新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」の解除後、会期を変更して開催しております】