日本では、平安時代以降の宮廷の人々が、自然の移ろいに人生の喜怒哀楽を重ね合わせて和歌を詠みました。人々が互いに和歌を詠み交わす中で、情緒的で洗練された感覚がより磨かれ、その優美さが宮廷文化の礎になりました。
後の時代の人々にとって、平安時代の宮廷文化はあこがれの対象でした。花鳥風月に代表される和歌の題材は、後世の美術工芸に強く影響を与え続け、様々な分野で美の表現が行われました。
豊臣秀吉は戦いに明け暮れた生涯を送りましたが、その一方で教養のひとつとして歌を学び詠み、 茶を楽しみました。豊臣家の人々においても歌を詠むことは盛んで、一族の中には木下長嘯子という優れた歌人を輩出しています。戦国の時代を生きた豊臣家の人々も、自然美に心を動かし、自然美を慈しんでいたのです。豊臣秀吉夫人・北政所が開創した高台寺には、日本の移りゆく季節と自然の美しさを題材とした品々が伝来しています。
この展覧会では、日本の人々が心動かされた自然美や風雅な感覚を高台寺伝来の品を通じて紹介いたします。