私は、1980年代より アートのメディア性に着目しながら、版表現を用いた作品を発表してきた。これまで「感情、記憶、居場所、眠り、知る」といった、我々が生きることと切り離せない事柄を取り上げ、絵画表現を起点に、版画、写真、映像など多様なメディアで制作を展開している。2014年は、ギャラリー16での初個展以来、およそ30年を迎える。この機会に、当時に発表していた作品を今日の美術に向けて発信することは、これまで遭遇することがなかった世代に対して、新たな感性の創出と解釈が生まれる場になることを期待している。また、1980年代を「絵画と彫刻の復権の時代」と括ることに対して、その動向に向き合いながら制作していた頃を振り返り、当時の問題意識を鮮明にすることは、どのような意味があるのか問いかけたい。長尾浩幸