本展は、80年代前後生まれの新進気鋭の作家10名の作品を通して、「主体の不確かさと再構築」という問題にアプローチするものです。バブル経済崩壊後の長期不況の閉塞感と、高度情報化社会のネットワークに囲まれて育ったこの世代の作家たちは、情報化・細分化された不確かな私たちの生のありように対して敏感に反応し、それぞれの視覚言語を用いて作品へと昇華させています。本展では、固有の身体や記憶を持った個体としての生、他者の言葉や行動の身体的トレース、情報の取捨選択や認知、物質との身体的接触、集合的・匿名的な想像力の包摂、私たちが日常生活を営む「日本」の文化的・政治的状況への批判的眼差し、アーティストという制作主体そのものへの問い直し、といった様々な局面において、揺らぎの中に立ち現れるものとしての「主体」のあり方を考察します。
展覧会タイトルの「egØ」は、「自意識、自我」を意味する「ego」と、「空集合(何も要素を含まない集まり、空虚)」を意味する数学的記号「Ø」をかけ合わせたものです。この発音が不可能な造語は、現代日本における主体の捉え方さ、言い難さを視覚的にも表現しています。
出品作家:厚地朋子/伊東宣明/菅谷奈緒/田中英行/中田有美/二藤建人/潘 逸舟/彦坂敏昭/宮永亮/柳井信乃