京都市立芸術大学は今年度をもって任期を終える木村秀樹教授の退任記念展を開催いたします。
木村秀樹は本学の西洋画専攻科(大学院の前身)を修了以降、1970 年代から常に日本の現代美術の先頭に立って活動してきました。また版画領域においては知らぬ者のない作品(まだご存知ない方はちょっとググってみましょう!)『鉛筆』の作者です。その端正で理知的な造形と深い思索に裏打ちされた作風は我が国のみならず諸外国においても高い評価が与えられてきました。まだ市民権を得て日の浅かった日本の現代版画において写真を使用したシルクスクリーンによる表現を開拓した代表的作家としてつとに名が上がりますが、20 世紀半ばにロンドンとニューヨークで産み出されたポップアートを、作り手として独自の視点から解釈した方法と応用を手本とする者は後を絶ちません。
1974 年から長く勤めた嵯峨美術短期大学(現京都嵯峨芸術大学)を辞し、1995 年からは本学で教鞭をとり、その教室からは前職同様多くの若い才能が巣立ちました。
また幾つかの重要な展覧会の企画、グループの招集や出版の企画等、一作家に留まらない活動は画家が黙って絵を描いていれば良い時代が過ぎ去ったかのような現代の状況にも先便を告げるものでもあったといえるでしょう。
本展では広い会場@kcua1 で新作を、2階@kcua2 では例の「鉛筆」を含む、主に‘ 70年代の作品にフォーカスしたレトロスペクティブな展示が披露されます。この展覧会で指導者や組織者ではない、1作家としての木村秀樹がどのように出発し、どのように深化したのかを知ることのできる有意義な機会となるでしょう。