山口薫(1907~1968)は、作品がたたえる豊かな詩情から「 詩魂の画家 」と評された近代日本美術を代表する洋画家です。
群馬県に生まれた山口は、東京美術学校の西洋画科を卒業後にフランスに留学し、帰国後は新時代洋画会や自由美術家協会、モダンアート協会などの美術団体を結成しました。また、52歳で東京芸術大学の教授となった山口は、自身の画業だけに留まらず、のちの日本の洋画界を牽引していく若い世代の画家の育成にも尽力しました。
山口は、秀でた色彩感覚と造形的感性によって、独自の画業を展開しています。絵画のみならず、制作中に残した数多くの詩文には、生きる苦悩や歓びなど、内に秘めた強い思いが残されており、画家として作品と真剣に向き合い対峙した姿が見受けられます。作品に苦悩した一方で、娘のあや子や愛犬のクマ、庭や風景といった身近にあるモチーフも描いており、数々の人間味あふれる作品を残しています。
1968年、胃ガンを患い入退院の合間を縫って制作した 「 おぼろ月に輪舞する子供達 」は、山口薫の思想を見事に表した絶筆の作品となりました。死を予感し、来世であると思われるおぼろ月に帰ってゆく山口薫の辞世の画でもあります。
本展では、山口薫が画家としての実質的なデビュー作となった「花の像」から、絶筆となった「 おぼろ月に輪舞する子供達 」まで、画家山口薫の生涯を追った約70点の作品を展覧いたします。