井上裕加里は、モノ事の「バランス」を問う仕事を展開しているアーティストです。
コカ・コーラ社の広告入り二人掛けベンチをロッキングチェアーに変換した「Rocking chair(2011)」では、揺れの主導権争いとともに、多国籍大企業と庶民とのバランスをも示唆しました。「National land (2012)」は、日本と韓国において、それぞれの“領土”を撒きながら歩き、まさに日韓のバランスを考えさせるものでした。そして国家と民衆の関係を問う「猫をかぶる(2013)」では、アーティスト自身が視覚を失う猫のマスクを被り、国家建設の為の演説を猫語(我々にはにゃ~にゃ~としか聞こえない)で行いました。ポップな中にも社会問題を照射する井上裕加里の個展にご注目ください。