水野悠衣は、一見モザイクのかかったデジタル画面のような抽象ミニマル絵画を展開する日本画家です。
しかし、その絵画には、無機質で厳格なグリッドは存在せす、むしろ顔料の美しさもある生き生きした存在感のある小さな形体の集積であることに気付きます。
「舞台表現の輝き」をコンセプトにした『Stage (2011)』では、横長サイズの画面一杯に、舞台を照らし出すスポットライトの残像がそのまま網膜上に定着したかのような不思議な画面を生み出し、「月の光の力強さ」をコンセプトにした『Moonlight (2010)』では、月という単一の発光体をあえて小さな形体の集積で表現することによって、逆に暗闇を吹き飛ばすぐらいの存在感のある光の表情をも映し出しました。これら、モチーフの核となる本質を捉えさせすれば、むしろ具体性を削ぎ落としたことによって、より豊かな解釈を可能とする多様性が獲得できることを彼女の作品は教えてくれます。
本展では、それら多様性のある絵画を複数枚組み合わせることによって、新たなイメージを生み出す試みです。ご注目頂ければ幸いです。