画面に何かはっきりとはしない風景や人が描かれている。捉えようとするとふっと流れてしまいそうなぎりぎりのところで漂っているイメージ。そのイメージはどこかへ消えてしまいそうになりながら躊躇っているようにもみえる。そこにある様々な筆致。かのデュビュッフェは、色というものはなく、色を持った物質があるだけだと述べた。
「みどりの数だけ弾力がある 。一つは空に吸い込まれ、一つは地面に降りてきた 」と塩崎は語るように、筆致の集積が色を生み、イメージを生み、弾力のあるイリュージョンを生みだす。ただ塩崎の色には揺蕩うなにかがある。塩崎の画面全体をふと眺めると、どこか茫洋とした海のような原風景がみえてくる。そこにはあるイメージを支えるものとして影の如きあるイメージがある。印象派は影もまた色であることを示した。しかし、塩崎の筆致はそれに比して自由であり、物質というものを筆致が引き連れ、色を生むのだが、その色は時に揺蕩う。その揺蕩いを掴むことができれば塩崎の作品の抱え持つ茫洋さがわかってもらえるであろう。
「誰かに何かを伝える術を持たない、意味をなさない感覚にも呼応したいと思っている」
皆様どうぞご高覧ください。