KAB Dialogue インタビュー/対談

Vol.56

対談2018.01.09 UP

京都文化芸術コア・ネットワーク例会『大ボランティアの会』レポート

文化芸術のボランティア活動に関わる人たちが集まる『大ボランティアの会』に行ってみた!

  • 編集者:おかん

京都の文化芸術施設や場を支える「ボランティア・スタッフ」。展覧会の会場などで活動を見かけることも多いのでは? しかし、その活動の様子は場によって千差万別。そんな活動に関わるが集まった、京都文化芸術コア・ネットワーク例会として開催された『大ボランティアの会』の様子をお届けします。

みなさん、ボランティア、参加した事ありますか? こんにちは、京都でライター&編集活動をしている、おかんと申します。雑誌や書籍、Web記事などの記事を執筆しています。
Wikipedia先生によればボランティアとは…… 「ボランティア(英: volunteer)とは、自らの意志により参加した志願兵のこと。長じて、自主的に社会活動などに参加し、奉仕活動をする人のこと。また、奉仕活動そのものを指すこともある。有志(ゆうし)、奉仕者(ほうししゃ)などともいう」。
ある日、知人のアーティストから「京都のボランティアに関わるイベントがあるからレポートして!」というお話がありました。そもそも、アーティストの人はむしろボランティアをうけて展示などをする側では……?
とにもかくにも気になったので、京都芸術センターで開催された「大ボランティアの会」に行ってきました。


出迎えてくれたのは「大ボランティアの会」に私を呼んでくれたアーティストの増本さん。


おかん:今日はよろしくお願いします。そもそも増本さんって作品をつくる側の人ですよね、ボランティアする方じゃなくて。今日呼ばれた「ボランティアの会」って増本さんとなんの関係があるの?


増本:そもそものきっかけは、ぼくが所属する株式会社フェブ(注1)で、京都芸術センターのボランティアのシフトを管理するシステム開発を請け負ったことです。そのうち、ボランティア制度について理解が深まれば深まるほどさらに興味を持ちはじめて。それが本会を提案した背景です。また、ぼくは現代美術領域のアーティストとして、国内外いろんな展覧会に参加しているんだけど、ちょうど2015年に、年間共催事業というかたちで1年間かけて京都芸術センターさんと一緒に仕事をしたんです。そのときに、多くのボランティアの方々に助けられた。むしろ、彼らがいなかったらぼくたちの事業は成立しなかったぐらいで。その経験もあって大きな会合を開こうと京都芸術センターにもちかけたんです。


おかん:アーティスト自らがそうした声を上げるくらい、ボランティアって重要なんだ。ボランティアなしでは事業が成立しない?


増本:そう。さらに、京都芸術センターのボランティア担当の谷さんと関西圏の美術館や博物館のボランティア制度についてリサーチしてきたんだけど、それぞれが独自の仕組みで運営されていることに気づいて。なんていうか、興味を持ったはいいけど、これまでボランティア制度を画一的に捉えていた自分をものすごく反省した。そんなこともあって、ボランティア制度を基軸として、様々な立場の人が集まり話し合う場があるのも悪くないのではないかと思ったんです。でも、本当に、本当に、準備期間が長かった(苦笑)
なので、今日これから、どうなっていくのか先の見えない感じにすごく興奮しております!


おかん:なるほど〜そんなアツアツの想いがあったんですね。でもなんで私を呼んだんですか?もっとアート系のライターに頼めばよかったのに……と、少し疑問を持ちながらここにいるんですが。


増本:ボランティアに参加される方々は多彩な経験をされている方が多いんです。つまり、アートだけでない様々な視点で参加されているとぼくは考えています。けれど、アート系ライターでは、どうしてもアート側からだけの視点になってしまうかもしれない。そこでローカルカルチャーとか、エンタメ系のWeb記事とか、いろんな取材をされているおかんなら、ぼくのアツアツな想いも含めてすくい取ってくれるだろうと思ったんですよ。


おかん:そう言ってくれるのは嬉しいけど、マジでボランティアのような崇高な意識と日々かけ離れた生活を送ってるので、居住まいを正して望みたいと思いますね、ハイ!


注1)株式会社フェブ:若者の未来をデザインするというポリシーのもと、NPO、大学などを主なクライアントとし、デザインを通じて様々なアウトプットをおこなっている。増本は、主にウェブサイトの制作およびウェブシステムの開発を担当。例えば、商品の購入を通じて寄付をするショップサイトの制作、日本語学習者のためのオンライン学習システム、あるいは、NPO・NGOの活動を、Webを通じて支援する寄付や募金の仕組みなど。


<「施設」「スタッフ」「ネットワーク」の立場が集合した大ボランティアの会>


増本:ぼくの意見だけではなく、現場、ボランティアを集める側も今回は来てもらっています。京都芸術センターの谷さんです。


:こんにちは。京都芸術センターのアートコーディネーターの谷です。普段は、このセンターの事業企画や運営をしています。公演や展覧会の企画運営ももちろんなんですが、広報誌の発行、制作室の管理、そしてボランティア活動の運営や調整も、僕たちアートコーディネーターの重要な仕事です。今日はよろしくお願いします!


おかん:よろしくおねがいします。あのですね、そもそも『大ボランティアの会』ってどんなイベントなんでしょう。


:京都にはたくさんの文化芸術施設があるじゃないですか。おかんさんは、京都芸術センターとか、京都文化博物館とか、行きます?


おかん:うん、行きますよ。京都はあちこちに美術館があるし、芸術活動も盛んですしね。


:そうですよね。ただ、芸術鑑賞や、芸術っていう文化を支えていくうえで、ボランティアの人たちの協力が必要不可欠なんですよ。でも、ボランティアの運営施設って数が多くて。施設間での情報共有とか、ネットワークの構築がまだまだ整ってないんですよ。


おかん:ほー。


:今回は、普段バラバラに活動している各ボランティア施設やスタッフのみなさんが一同に会して、意見交換の場を設けようというイベントなんです。京都のボランティア現場を知ってもらうために、ボランティア活動がもっと活性化するように、記事をレポートしてほしいんです。


おかん:なるほど。でもちょっと待ってください。そもそも、意見交換の場が必要なほどボランティアスタッフっているんですか?


:そうですよ、会場の京都芸術センター、フリースペースをご覧ください!




おかん:30人くらいいる! すみませんホント、そんなにいらっしゃるとは思っておりませんでした……!


増本:ボランティアの現場を知らないと、そう思うのは無理もないですよ。そもそも『文化芸術に関するボランティア』ってどんなイメージを持ってます?


おかん:うーん、難しいんですけど、ボランティア自体はすごく大切な活動だと思うんです。たとえば災害なんかの復興にはボランティアの人たちの協力が必要不可欠なわけだし。でもねえ……。


増本:でも?


おかん:たとえば以前、某市町村が「プログラミングを教職員に教えてほしい、ただし無償で。さらに経費は事業者負担で」っていう募集要項を出してネットで大炎上したこともあったじゃないですか。


増本:ああ〜、ありましたね。


おかん:ボランティア内容にもよるんですが、基本的にスキルや知識、経験を提供するものだと思うんですよ。それを無償でやり取りすることが押し並べていいのかどうかは、まだ不明瞭なところがあるかも。


増本:なるほど、よく言う『やりがい搾取』ってやつね。


おかん:だから、ボランティアを募集する側、それを受ける側にどんな思いがあって運営・活動をしているのかは正直ちゃんと理解しておきたいですね。


:今回はボランティアに関する3つの立場からいろんな登壇者がスピーチや活動報告をします。芸術現場で行われているボランティア活動がどんなものか、ちょっとでも発見をしてもらえるといいですね。


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登壇した方々は以下。「スタッフ」「施設」「ネットワーク」の3つの立場の人々が集まりました。
▼スタッフ:ボランティア活動をする方々
・京都芸術センター ボランティアスタッフ
・博物館ふれあいボランティア「虹の会」 ボランティアスタッフ
▼施設:ボランティアを活用する場所
・京都芸術センター ボランティアスタッフ担当者
・京都芸術センター ボランティアウェブサイト管理者(株式会社フェブ)
・京都文化博物館 ボランティア担当者
・KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 サポートスタッフ担当者
▼ネットワーク:ボランティアをつなぐネットワーク
・京都市教育委員会生涯学習部 博物館ふれあいボランティア「虹の会」担当
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<展示サポートに外国語案内 多岐にわたるボランティア活動>


会場に設置された資料スペースにはたくさんのボランティアに関する資料が。


おかん:芸術の場でのボランティア活動ってどんなものがあるんですか?


:おおむね共通しているのは、展覧会の監視や展示室の受付・案内・誘導などのスタッフらしいスタッフですね。施設によってはイベントやワークショップのサポートや外国語での案内なんかもあります。




おかん:外国語案内はさすがに人を選ぶかもしれませんが、ボランティア自体は誰でもできるんですか?


増本:京都市内へのアクセスが容易にできることが条件にある場合もあるんだけど、満18歳以上であれば誰でも加わることが可能。活動の内容によっては有償のものもあって、活動前に展示品などの基礎知識を学ぶ研修会もある……って感じかな。


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京都の文化芸術に関するボランティアの主な活動内容と登録条件

▼ほかにもこんな条件の例も…
・京都市内に在住、または通勤している。施設へのアクセスが60分以内にできる、など
・満18歳以上。でもやっぱり時間に余裕のある年配の人が多い
▼その他の特徴
・施設によっては活動前に研修がある
・活動内容によっては謝礼がでることもある
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<接客やコミュニケーションスキルもあがる 生涯学習としてのボランティア活動>



ボランティアスタッフによる講演。活動記録はもちろん、ボランティアによって生活の何が向上したかなど、具体的なメリットのお話も。

おかん:ボランティア活動をされている人によるスピーチ、どの人もイキイキしてましたね。自主性に富んでいるというか。ボランティアって「指示に従事する」という印象もあったので、ここまで皆さんが活動を“自分ごと化”しているとは……。


:“自分ごと化”という部分に関しては、たとえば研修で事前に展示品について学ぶ機会があったり、スタッフの発案でイベント開催が実現したりと、充実したサポートやスキルを採用してくれる土壌がきちんとあるからですね。


:ボランティアの人でもいい意見はどんどん現場に取り入れられるんですね!


熱心に話を聞くだけではなく、スタッフ同士での話し合いも盛ん。

おかん:参加してる人たち、わきあいあいとしていて仲が良さそうですよね。大人になって友達をつくるのって難しいじゃないですか。ボランティア活動を通じて交友関係が広がるってこともあるんだろうなあ。


:最初はひとりでの参加だったのが、次回からはそこで仲良くなった人と一緒に参加するってこともありますね。中には友達になって遊びに行ったり、恋仲になる人たちもいたそうですよ……。


おかん:充実した人生すぎる!


増本:研修や養成講座も充実しているため、生涯学習の場という一面もボランティアにはあります。たとえば「京都市内博物館施設連絡協議会」という協議会が過去に開催した養成講座のなかには、自分らしさを発揮するための講義や、博物館とは何かを学ぶ講座があって。


おかん:ボランティア活動が接客やコミュニケーション能力向上にもつながるワケか〜。生きる上で重要なスキルですもんね。


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京都の文化芸術に関するボランティアの特徴
▼生涯学習
・文化芸術に関する知識がつく
・事前に行われる研修や講座を通じて、自己啓発やセルフブランディングに繋がる
▼交友関係
・芸術活動に関わるなかで新しい友人ができる
▼自己実現
・ボランティアスタッフの企画でイベントが開催される
・施設設備やサービスの向上にボランティアスタッフの意見が採用されることもある
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<やりたい人が多すぎるがゆえ ボランティア活動に関する問題点>



「施設」「スタッフ」「ネットワーク」の3つが揃うってことは基本的に珍しいようで、施設やネットワーク側からの質疑応答に関して、厳しい意見が飛び交う場面も。


おかん:ボランティアが抱える問題点って何ですかね?


:まず受け入れ窓口がバラバラということ。施設のHPで受け入れを募集していることもあれば、京都市が運営している教育委員会生涯学習部や文化芸術企画課もあります。


おかん:実際、ややこしすぎるって声が現場からは結構あがってましたね。


:あと、これはありがたいことではあるんですが、リピーターがすごく多いんです。だから新規の人が入りにくいという問題点もある。任期をつけるなど、団体によって制度を工夫してはいるんですが……。ボランティアに参加できるシフトの枠は決まっていることが多いですから。


おかん:やりたい人が多いがゆえの悩みですね。スキル豊富なスタッフの方がユーザーによっては有難いけど、生涯学習の場として考えたらよりたくさんの人にボランティアを経験してほしい……。解決にはバランス感覚が必要ですね。


増本:京都芸術センターのシフト管理についていえば、受け入れ人数の上限とシステムの連携がまだ弱いところですかね。ボランティアスタッフの中には様々なライフスタイルの人がいて、たとえばWeb上で予約ができる人もいれば、電話やFAXしか使えない人もいる。複数の異なるデバイスから一度に申し込みが来た場合、タイムラグで予約できない人も出てくるんですね。


おかん:なるほど。若い人たちだけだったらWeb一本化でいいけど、そうもいかないですよね。


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京都の文化芸術に関するボランティアの問題点
▼窓口
・施設ごとであったり市の専用窓口があったりと入り口がバラバラ
▼新規参入
・リピーターのスタッフが多いため、新規参加希望者がなかなか入れない
▼予約システム
・Web、電話、FAX、郵送など予約手段がバラバラで、予約にタイムラグが発生して席が埋まってしまうことも
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<会の終わりに>


会場内のコーヒースペースがあったんですが、じつはこれもボランティアでした。ボランティアのためのイベントにもボランティアが関わる、ボランティアで回る世界……。


おかん:ボランティア活動って現場現場で活動したらハイ、終わりで次シーズンに移るという短いフェーズの連続なのかと思っていました。問題解決はボランティアスタッフをまとめる運営だけがおこなって、その下には降りてこないのかと。でも、実際は全ての人たちが多層構造的に問題解決に取り組んでいる。ボランティアスタッフも一丸になって芸術活動の場を向上させるために長期的に取り組んでいるのは今日の大きな発見です。


:京都は文化芸術が盛んだからこそ、幹から枝葉の部分まで幅広い人たちが「良くしていこう」「発展させていこう」という意識が高いんですよ。


おかん:それにボランティアを通じて人間的なスキルが向上する。従事する側、される側でwin-winな関係が確立されているんですね。


増本:ボランティアスタッフが活躍することで市民全体の教養や知力は格段に上がっていきます。今後はもっと、ボランティアのニーズと参加者の方々がバランスよく回っていければと思いますね。


おかん:もし何か自分の知っていることが役立つなら、ボランティアにも参加してみようかなと思えました。今日はどうもありがとうございました!


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京都の文化芸術に関するボランティアの窓口一覧

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会は14時から18 時までの長丁場だったのに、みなさん最後まで熱心に聞き入っていました。タフで情熱的な人、多すぎ!

Plofile

おかん(ヒラヤマ)

1989年生まれ兵庫県出身。京都在住の編集者・ライター。ローカルと食・酒を主軸としたコンテンツ制作を得意とする。「ジモコロ」「デイリーポータルZ」「Yorimichi AIRDO」などWebメディアへの執筆多数。また『Men's Leaf(リーフパブリケーションズ)』や『京都移住計画(田村篤史著/コトコト)』など、京都に根ざした雑誌・書籍制作の編集・執筆などもおこなう。デザイナーの有路通子とユニット「おばんざいスナック」なるフードプロジェクトを展開中。産地や旬にこだわってつくった"うまいもん"を、京都をはじめとした全国の店舗を借りて提供している。Twitter:@hirayama_okan

増本 泰斗(ますもと やすと)

1981年広島県生まれ。岡山県出身。現在、京都在住。2007年〜2008年ポルトガル・リスボン在住。
株式会社フェブのWEB担当のディレクターとして、様々なWEBサイト制作やWEBシステム開発に従事。
またアーティストとしての主な活動に、食べものと表現の関係を分析するEpicurean Painting(田中和人との協働企画)、社会の問題について実験的な理論を試作するGrêmio Recreativo Escola de Política、もうひとつのグローバリズムを探るThe Academy of Alter-globalization、Picnic(杉田敦との協働企画)、bar spiritual fitness(吉濱翔との協働企画)、青空カラオケなどがある。

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