観衆に自らの肉を投げつけながら大女優の語る演技論・俳優論。
白雪姫と狩人、ふたりが語り合う噛み合わない真・善・美。
作家自身の父親像が投影された〈さすらい人〉による国家論。
一度聞いたら癖になるイェリネクの長広舌とひねくれたユーモアを、どうぞ!
『光のない。』(2012年)、『スポーツ劇』(2016年)に続く地点によるイェリネク第三弾。チョコレートケーキから始まり、グラニースミス(青リンゴの一種)、レバーケーゼ(ドイツ風ミートローフ)と多種多様な固有名詞が散りばめられ、何が何の暗喩であるかもはやわからないほどの膨大なイメージが詰め込まれているのはいつものこと。雑多なイメージの向こう側に確かに存在する「権力」や「国家」、「キリスト」といった大きな力について思考し続ける強さもイェリネクならでは。けれどもこの作品ではタイトルがなんと言っても最大の破壊力をもって笑いを誘います。すなわち「ま、いいか」! 未体験の方に堪能していただきたいイェリネクの魅力、ぜひ!