構成・演出|福井裕孝
出演 |向坂達矢 金子実怜奈
インテリアは、人の生活する室内「空間」と、その空間を構成している家具や家電、装飾品といった「モノ」の両方を意味しています。寝室という空間を寝室たらしめているのは、ベッドというモノとそこで「寝る」意志と行動を示す人の存在のはたらきです。そこに位置する人やモノによって空間や状況は措定されていく一方で、措定された空間や状況に人の意志やモノの機能は従属しているようにも見えます。この相依的な関係を示すことから、演劇が生成される空間について考えたいと思います。この作品は、ある一人の「人」の私的な生活風景を再演出して構成し、上演とします。日常の地平から本来の「人」と「モノ」と「空間」の関わりを顕在化させ、これまで演劇が一方的に私語を禁じてきた「モノ」や、劇場によって隠蔽されてきた「空間」と新たに出会えることを期待しています。
福井裕孝
私にとって、福井裕孝さんのつくる演劇はとても面白く、福井さんは最も注目している演劇のつくり手の一人である。昨年、二つの作品を観た。「ピントフ」と「Penguindam」である。どちらの作品からも「出来事の流れ」を受けとる時の悦びを感じることができた。その流れは、漂う時間によって既存の意味がせき止められ、いつの間にか、違う流れに接続されることによって起こる「出来事の流れ」が生まれるという「演劇的な時間」なのであった。おそらく、この「いつの間にか」というところに、この演劇の秘密があるのではなかろうか。それをもう一度確かめてみたい。5月に、新作を上演するそうなので、それがそのチャンスとなるだろう。
松田正隆氏 演出家/劇作家/マレビトの会