フランス演劇界において、もっとも正統的かつ過激な演出家であるクロード・レジの、《最後》の作品。
オーストリアの夭折の詩人、ゲオルク・トラークルの描く自伝的エクリチュールが、
徹底的なテキスト探求によって、禁欲的で硬質な舞台表象として現れる。
関西では、『海の讃歌(オード)』以来、8年ぶりの関西公演です!
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私の仕事において、今や到達できない境地に到達したいという思いにとりつかれている。
そして、トラークルは人間の一番あいまいな部分に入り込むことのできる輝ける見本のような存在なのである。
それはすべてのタブーを破ることである。
クロード・レジ
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演出:クロード・レジ Claude Régy
フランスの演出家。1923年生まれ。特定の劇場や劇団に属することなく、独自の理念で、主に同時代の作家の作品を上演し続けている。1952年から活動をはじめ、初期にはガルシア・ロルカやメーテルリンクなどを演出していたが、1960年代にマルグリット・デュラスの作品と出会い、『イギリスの恋人』(マドレーヌ・ルノー主演、1969)などを演出。さらに1965年からはピンター、オズボーン、ストッパードなど英米の作品を手がけ、1970年代以降はナタリー・サロート作品上演の一方で、ペーター・ハントケ(ジャンヌ・モロー主演『ボーデン湖の騎行』1974)、ボート・シュトラウス(『再会の三部作』1980)などのドイツ語圏戯曲の紹介にもつとめる。メーテルリンクの『内部』(1986)やアンリ・メショニック訳の聖書の一部をもとにした『賢者の言葉』(1995)では、言葉や声に関する徹底した探求の成果が見られた。90年代以降ではノルウェーの現代作家ヨン・フォッセの『だれか、来る』(1999)やサラ・ケイン『4時48分サイコシス』(イザベル・ユペール主演、2002)などでの刺激的な舞台で話題を集めた。2009年にはフェルナンド・ペソア作『海の讃歌(オード)』を発表、翌2010年に初来日公演として、静岡と京都芸術劇場春秋座にて上演。1981年以降、パリ国立俳優学校(コンセルヴァトワール)で教鞭をとり、その著作によっても、多くの若い演出家や俳優に影響を与えている。
本作『夢と錯乱』は、2016年に93歳で演出。クロード・レジ自身、本作は最後の作品になると語っている。
作:ゲオルク・トラークル Georg Trakl
1887年ザルツブルグに、裕福な商人の家庭に生まれる。若くして薬剤師として働くなかでモルヒネ中毒となり、妹のグレーテと近親相姦の関係にあった。1914年にポーランドのグロデック近郊の東部戦線で、極めて悲惨な状況下で負傷者の治療をしていたときに、コカインの過剰服用により27歳で亡くなった。
『夢と錯乱』
作:ゲオルク・トラークル
仏語訳:ジャン=クロード・シュネデール、マルク・プティ(ガリマール社)
演出:クロード・レジ
出演:ヤン・ブードー
演出助手:アレクサンドル・バリー
舞台美術:サラディン・カティール
音響:フィリップ・カキア
照明:アレクサンドル・バリー
初演:ナンテール=アマンディエ劇場、2016年9月15日