KUNST ARZTでは黒沢理菜の個展を開催します。
黒沢理菜は、伝統工芸的な枠組みに捕われることなく、主に蒔絵や螺鈿といった漆工芸技法による装飾文様を自身の偏愛/憎悪する対象物に入念に施すアーティストです。
音楽一家に生まれたものの、一人だけ美術の方向へ行くことから生じたアンビバレントな感情を更紗模様に込め、ピアノ全面に漆装飾文様を施した「ひとつ」、フェイク的な「○○ふう」というタイトルを与えた「重箱(異国ふう)」では、あえて伝統工芸的な枠組みそのものを批評、客観視するかのように、ありえないデザインを引用し、「女神セーラーぱんつシリーズ」に至っては、もはや伝統工芸界を逆なでするレベルです。しかし、だからこそ逆に、病的なまでに完璧に施された漆の伝統工芸的な魅力が浮き彫りになります。彼女の破壊力にご注目ください。(KUNST ARZT 岡本光博)