KAB Dialogue インタビュー/対談

Vol.1

インタビュー2012.07.01 UP

自分流に、これからも
小鼓の魅力を伝え続ける

曽和尚靖(幸流小鼓方)

  • 聞き手:山本麻友美/倉谷誠
  • 撮影:表恒匡

舞台で凛々しく清々しい鼓の音を響かせる曽和尚靖さん。平成21年度に京都市芸術新人賞を受賞され、ますます活躍の場が広がっています。普段の様子、そして能楽師が考えるこれからの京都の姿とはどのようなものでしょうか。

-能楽師の方としてはかなり早くからホームページを立ち上げて活動してらっしゃいますね。イラストを用いた明るい雰囲気で、いろんな方が見ていらっしゃるとうかがいました。

能楽だからと言って厳めしくお堅いイメージではなく、「どうぞいらっしゃい」という感じで間口を広げるよう心がけています。能楽師はめったに宣伝に出たりしないので、自分の武器である鼓を通して発信することに意味があると思っています。
特に、「Do you Kyoto?ネットワーク」という京都から美しい地球を未来に伝えるための呼びかけを行うグループのメンバーになってから、他の業界の方との交流が増えたことで、そのことを改めて痛感しています。それまでは、能楽という世界の中だけでものを見ることが多かったのですが、視野が広がりました。実は、能の世界では名刺を持つことがなくて、名刺を持ち歩くようになったのもその影響です。鼓は父と祖父だけがやっているもので、「鼓=曽和さん」だと本当に思っていたんです。世間に出たことないし、小さい頃から「坊ちゃん、坊ちゃん」てみなさん言うてくれはるし(笑)。僕はひかれたレールに乗ってここまで来た人間です。どこまでも進んでいきます。

-曽和家は代々、鼓の名手を排出する家系。おじいさま(曽和博朗氏[重要無形文化財保持者(人間国宝)])や、お父様(曽和正博氏)も小鼓方として活躍されていますが、能楽師の他にあこがれた職業や鼓から離れようと思ったことはありますか。

郵便局員やタクシーの運転手にあこがれたことはあります。カッコいいなぁ、天才やなと。でも鼓が好きやから、嫌いやからと感じることより、ただ「日常やった」というのが正直なところです。1回だけ稽古をさぼって、ぼろくそに怒られたことあります。こんなに怒られるんや、というぐらい怒られた。小学校2年生ぐらいで、自転車買ってもらったばかりの頃で自転車で遊びたかったんですね。その後は稽古をさぼったことも、嫌やと思ったこともないんです。

-着物はもちろん、洋服や持ち物にもこだわってらっしゃいますが、特に気を付けてらっしゃることなどありますか。

京都芸術センターに来る時もそうですが、普段から着物でブラブラしています。最近の京都はそういうのが似合う街になってきていると思います。空間のよさだったり、雰囲気だったり。京都と和の文化が違和感なく全部つながっているのかもしれません。鼓は、京都の土地に似合うものですし、気候にも合っています。 普段から、鼓が好きやから、着物が好きやからというよりは、「らしく」というのを心掛けています。祖父もよく使うのですが、例えば能楽の曲で言えば「隅田川」という悲しい曲なら「隅田川らしく」、「羽衣」なら「羽衣らしく」、そして鼓を教える時は鼓の先生らしく、ということ。 あとは、日本の楽器って聞いたら、「鼓」ってみなさんが言うてくれるようにしたい。鼓自体が、能と一緒で総合芸術です。そこに僕という珍キャラを活かしつつ(笑)。鼓を媒体にして、新しい発想で活動していきたい。

―おじい様である曽和博朗先生のことを、とても大切にされているとうかがいました。

祖父が、人間国宝になって14年です。僕にとっては、おじいちゃんというあだ名の先生です。祖父の元気の源になりたい。毎日、生気を吸われてヘトヘトですが、こんなにいい孫はいないと自分で思うぐらい、おじいちゃんのことを考えて生活がまわっています。祖父は、4月の末に満87歳(数えで88歳)になりますが、まだまだ現役。誕生日の4月27日に記念の米寿祝賀能を開催し、祖父は曽和家では最初に習う「羽衣」を披露し、僕も「檜垣」を披かせていただきます。

-鼓はシンプルですが、奥深い楽器ですね。

女の人と同じですわ。人ですから普段から気をつけていなければ傷ついたりしますよね。乾燥したらお肌に悪いし、ちゃんときれいにしてあげたらピカピカになって、いいスカートはかせてあげたらおしゃれに見えたり。鼓も同じで人間そのものです。それに、同じ鼓でも打つ人によっても毎日の環境によっても違います。十人十色ではないけれど、十人十音色。今は、鼓、鼓と言い続けるのが大事と思っています。

-10年後、20年後の京都の文化芸術はどのようになっていると思いますか。

現在、和の文化や日本のこと、いろいろなことが見直しの時期にきていると思います。この先、ダメになっていくなんて、これぽっちも思わない。10年後は必ずよくなっていると思ってやっています。
僕は、本来はネガティブなんですけど、ポジティブに考えるしかないんです。ひかれたレールをまっしぐらに進むしかないから。油気がなくなってちょっと元気なくなる時あるけど、進む方向は前しかないですから。

■ 取材日:2012年4月12日(木) ■ 取材場所:京都芸術センター にて

今後の活動

京都芸術センターで催される明倫茶会の席主を務めます。

明倫茶会-ぽんッ鼓知新-
■ 日時:6月30日(土) 10:30/11:30/13:30/17:00 (各席20名)
■ 会場:和室「明倫」
http://www.kac.or.jp/bi/1044

Plofile

曽和尚靖 (そわ・なおやす)

1973年、代々小鼓の名手を輩出する家系に生まれる。6歳より稽古を始め、祖父・曽和博朗(人間国宝)、父・曽和正博に師事する。繊細かつ大胆な音色を奏でる非常に感覚派的な小鼓奏者として、高い評価を得ている。近年、能や古典芸能をおしゃれに身近に感じてもらうために、各地でレクチャーイベントを開催し、鼓の魅力を全面にアピールするなど、能楽の普及や芸の向上に勤めている。
平成21年度、京都市芸術新人賞を受賞。
平成24年度、第30回度京都府文化賞奨励賞を受賞。
曽和尚靖氏のHP「プチ・鼓動」:
http://www.p-kodou.com/index.php

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